「ITで地方活性化」を担うサービスの本命Weekly Memo(2/2 ページ)

» 2008年12月01日 09時25分 公開
[松岡功ITmedia]
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SaaS型アプリケーションが本命になりうる理由

SaaS型/自社運用型別CRMライセンス売上高構成比率(矢野経済研究所推計)

 地方のITサービスベンダーの経営者が、こんな話をしてくれた。

 「地方の中小企業ユーザーはいま、IT投資に慎重になりつつも、ITを活用して経営効率を高めないと生き残れないという危機感も一層強めている。そうしたユーザーニーズに応えるためには、わたしたちが提供するサービスメニューとして、イニシャルコストの負担が小さくて済むSaaS(サービスとしてのソフトウェア)型アプリケーションを適用していけるようにしなければならないと考えている」

 つまり、SaaS型アプリケーションの適用が、ITで地方活性化を図るための本命のサービスになりうるというわけだ。

 ちなみに、SaaS型アプリケーションでこのところ急速に普及しているのがCRMである。IT市場調査を行っている矢野経済研究所が先頃発表した「CRMアプリケーション市場に関する調査結果」によると、CRMライセンス売上高に占めるSaaS型の割合は、2006年が24.6%、2007年が37.3%、2008年が49.1%の見込み、そして2009年には58.1%と半数を超えると予測している。

 加えて同研究所はこの調査レポートの中で、「SaaSは、イニシャルコストの負担やIT人材の不足に悩むユーザー企業にとってメリットのある提供方法である。また、数名からの利用も可能なことから、小型案件が中心となる中堅・中小企業への導入が広がっている」と指摘している。

 CRMをはじめとしたSaaS型アプリケーションが、地方の中小企業ユーザーにとっても有効なツールになりうることは間違いないだろう。ただ、SaaS型アプリケーションをサービスメニューに取り込んだ地方のITサービスベンダーのビジネスモデルがきちんと成り立つかどうか。SaaS型アプリケーションベンダーやユーザーとの契約形態における整備が必要だろう。

 ITで地方活性化を図るためには、地域のITサービスベンダーが同じ地域の中小企業ユーザーのIT活用の“主治医”になるのが望ましい。そして、SaaS型アプリケーションを有効な“処方せん”にしたいところだ。場合によっては、地方自治体が共同利用のクラウドサービスを運営するアイデアも出てくるだろう。先に紹介した経産省の取り組みも含め、いま起こりつつあるITのパラダイムシフトのメリットを先取りするくらいのアクションに期待したい。

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プロフィール

まつおか・いさお ITジャーナリストとしてビジネス誌やメディアサイトなどに執筆中。1957年生まれ、大阪府出身。電波新聞社、日刊工業新聞社、コンピュータ・ニュース社(現BCN)などを経てフリーに。2003年10月より3年間、『月刊アイティセレクト』(アイティメディア発行)編集長を務める。(有)松岡編集企画 代表。主な著書は『サン・マイクロシステムズの戦略』(日刊工業新聞社、共著)、『新企業集団・NECグループ』(日本実業出版社)、『NTTドコモ リアルタイム・マネジメントへの挑戦』(日刊工業新聞社、共著)など。


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