企業とブログのおいしい関係ブログの過去、現在、未来〜日本ブログ界の5年間と今後を占う(2)(2/2 ページ)

» 2008年12月05日 16時23分 公開
[佐藤洋志(みずほ情報総研),ITmedia]
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企業とブログ、そのおいしい関係を築くには

 ブログは企業のコミュニケーション基盤として定着していくのか、あるいは部分的な展開にとどまるのか、それともいつか飽きられてしまうのか。ここではイントラブログに焦点を絞り、ブログを利用したコミュニケーションの発展プロセスと可能性について、一橋大学大学院の野中郁次郎教授らが示した「SECIモデル」にのっとって考察してみたい。

 1 表出化(Externalization) 暗黙知→形式知

 得られた暗黙知を共有できるよう形式知に変換するプロセスである。社長ブログや広報ブログ、開発者ブログといった、これまでの典型的なブログ利用法がこれにあたる。

 多くの場合、形式知化されるコンテンツは公的な情報にとどまっているが、社員がもつ業務知識や伝承すべき技能、日ごろの考え、夢など、公的情報以外にもイントラブログを活用して伝えられることはたくさんある。新入社員が情報を整理して伝える、次代を担う若手社員に日々の気付きを書かせるなど、イントラブログがもっと活用されてもいいのではないだろうか。

 2 連結化(Combination) 形式知→形式知

 形式知同士を組み合わせて、新たな形式知を創造するプロセスである。情報共有や活用は、結局は情報を発信する「人物」ありきで推進していくものであるが、イントラブログであれば、さらに旬やネタといった「情報」自体が、形式知連結のハブにもなる。ゆるいつながりであるネタやイベントなどの「話題」を求心力として、企業内の不特定多数が集う場の設置が可能かもしれない。自由でゆるやかに、こだわりや企業DNAを情報連結のハブにする取り組みが出てきても面白いだろう。

 3 内面化(Internalization) 形式知→暗黙知

 利用可能となった形式知を基に個人が実践を行い、その知識を体得するプロセスである。企業内における知識の内面化というと、eラーニングによる学習などの公式かつまとまった時間を必要とする取り組みが思い浮かぶ。しかし、いまのビジネスマンにはそのような時間を持つ余裕はほとんどない。とはいえ、移動時間や待ち時間、気分転換の時間はまだあるだろう。そんなすき間時間にイントラブログを読んで、社内の動きやキーパーソンの考え方を把握することも立派な知識の内面化である。また部課長クラスが他部の若手の考え方やキャラクターを把握するために、イントラブログを活用するのも面白い試みではないだろうか。

 4 共同化(Socialization) 暗黙知→暗黙知

 共体験などによって、暗黙知を獲得・伝達するプロセスである。ホワイトカラーの生産性を考えた場合、コミュニケーションロスによる手戻り(資料の作り直しや度重なる連絡メールの執筆、複数関係者に対して何度も同じ内容の説明に走るなど)は大きなムダであり、根絶が求められるものだ。しかしイントラブログを書くことで、ブロガーとその周辺読者との間にゆるやかなコミュニティが形成されていれば、そこでは、あうんの呼吸や空気を読むことが知らず知らずのうちに実現される。こうしたリアルコミュニケーションを伴わないコミュニケーションでも、企業DNAを育み流通させる土壌は築けるはずだ。

 これまでブログは単に暗黙知を形式知に表出化するツールであるととらえられてきたが、こうしてみるとそれ以外にもエンタープライズに役立つさまざまな機能や可能性を持っていることが分かる。ブログ導入を検討している企業には、勇気をもって最初の1歩を踏み出してほしい。

 以上、エンタープライズにおけるブログ活用について、その歴史を振り返り、筆者の希望を交えてその機能と有効な活用法について筆者の希望を交えて述べてきた。より面白いブログの利用法を考えつく先進ブロガーの出現に大いに期待したい。

著者プロフィール:佐藤洋志

みずほ情報総研コンサルティング部マネジャー。ITコーディネータ。企業内の情報活用といったナレッジマネジメント分野や組織・人事関連制度に関する戦略コンサルティングを担当。


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