Salesforce.comによると、クラウドコンピューティングに関する同社とGoogleとの提携は、費用効果に優れたIT利用形態を中堅中小企業に提供するという。Salesforceは以前からFacebookおよびAmazonとも提携するなど、クラウドに本腰を入れる姿勢を示してきた。
オンデマンドCRMベンダーのSalesforce.comは、Googleと提携を結び、自社のForce.comプラットフォームをGoogle App Engineアプリケーションへのサービスとして利用できるようにすると発表した。Google App Engineは、Googleのクラウドベースのアプリケーション開発プラットフォーム。この提携により、Salesforceの開発者は、Googleの分散型ストレージシステム「Bigtable」にネイティブでアクセスできるようになる一方で、Google App Engineの開発者はSalesforceのプラットフォームにアクセスできるようになる。
さらに今回の提携により、Salesforce.comの開発者は、プログラミング言語のPythonを使って作成されたアプリケーションに連携することが可能になる。GoogleとSalesforceは今年の6月にも提携を結び、両社は「Force.com Tool for Google APIs」のリリースを発表した。これは、Force.comプラットフォームを利用する開発者がGoogle Appsのデータにアクセスできるようにするためのツールだ。
Salesforceでプラットフォーム製品のマーケティングを担当するシニアディレクター、エーリエル・ケルマン氏は「今日のように経済状況が厳しい時期には、クラウドコンピューティングという選択肢の優位性がいっそう顕著になる。短期間で成果が得られ、しかも初期投資は不要で、リスクも低い」と話す。同氏によると、これらのアドバンテージは、特に中堅中小企業(SMB)にメリットをもたらすという。
「SMB市場の顧客に話を聞くと、彼らはこういったスケーラブルなプラットフォームへのIT投資を活用したいという強い意欲を持っている。彼らが自分たちのアイデアをセキュアでワールドワイドなインフラ上で実現できるというのは、大きな魅力だ」とケルマン氏は話す。
今回の提携発表は、クラウドコンピューティングの普及拡大を反映した動きだといえる。クラウドコンピューティングは、ユーザーがインターネット(クラウド)からITサービスにアクセスすることを可能にするもので、サービスをサポートするインフラに関する知識は必要とされない。調査会社のIDCによると、この種のSaaS(サービスとしてのソフトウェア)は今後、SMBにとって魅力がさらに高まるという。
IDCはSaaSについて、「最も成熟し、広範に配備されたITクラウドサービスの形態」と説明している。IDCでは、比較的未熟なクラウドインフラ製品とは対照的に、ビジネスアプリケーションはこれまでずっとSaaS市場の最大の部分を占めてきたと指摘する。
さらにIDCでは、先進国ならびに発展途上国の未開拓のSMB市場を開拓するチャンスが、多くのITサプライヤーにクラウドモデルの採用を促す最大の要因になっていると分析している。逆に、SMBのIT投資を促す要因はアプリケーションであり、その度合いは大企業のIT投資よりもはるかに高いという。
Salesforce.comは11月、サンフランシスコで開催された年次ユーザーカンファレンス「Dreamforce 2008」において、Force.com、Amazon Web Services、そしてソーシャルネットワーキングWebサイトのFacebookと連携する接続パッケージを発表した。これは、Salesforceがクラウドコンピューティング、そしてクラウドとコンシューマーWebとの連携に真剣になっていることの現れの1つである。「SalesforceとGoogleの経営トップのレベルでは、インターネットがコンピューティングの中核だと考えている」とケルマン氏は話す。
ケルマン氏によると、クラウドコンピューティングをめぐる提携は、開発者にとってデータおよびアプリケーションへのアクセスを容易にするものであるため、Salesforceがベンダーとして自社のサービスの相互運用性を改善すればするほど、SMBはアイデアを素早くアプリケーションとして具体化できるようになるという。
「われわれの顧客は、コンシューマーWebを最大限に活用できるようになるのを強く望んでいる。しかも、安全、迅速、セキュアな手段によってだ。われわれがGoogle、Facebook、AmazonといったコンシューマーWeb分野のリーダーと緊密に協業しているのもそのためだ」(同氏)
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