自分たちの戦略をどのようにして実現するか、という見方からの戦略である。前回にも書いたが、自分たちの組織を「現在の姿」から「あるべき姿」に移行していくための、行動方針である。
計画には一般的に、次のようなものが含まれる。
新しい用語に、サービス・ポートフォリオがある。簡単にいえば、サービス・プロバイダが提供するサービスと、そのサービスにまつわるすべての情報を一覧にしたものである。その中には、計画・設計中のものから、開発・テスト中のもの、稼働・運用中のもの、そして廃止してしまったものなど、すべての状態のサービスが含まれる。これらすべてのステータスの中で、顧客から見える(顧客に見せる)開発・テスト・稼働・運用しているサービスが、サービス・カタログとなる。
また、サービスの内容のみならず、そのサービスが顧客に与える価値やメリット、なぜそのサービス・プロバイダがそのサービスを提供するのか、サービスを提供する上でのリスクや問題点にはどのようなものがあるか、といったことも含まれる。
同じような戦略を持ち、同じようなIT資産を持っているサービス・プロバイダが、方や成功しもう一方は失敗している、という例は多い。これは(必ずしもそうとはいえないものの)戦略がいかに計画に移されるか、いかに実行されるか、いかにコントロールされるかにかかっているのである。
自らの戦略や、そのための計画をどのようにして実行し続けるか、キープし続けるか、ということ。つまり「行動パターンとしての戦略」という意味である。
成功した行動パターンには価値がある。また、その行動パターンに一貫性があり、きちんとコントロールできるのであればなおさらである。そのような行動パターンは、ほぼ文書化される。中には暗黙知として文書化されないものもあるだろうが、そんな行動パターンの中にも価値は潜んでいる。
行動パターンの例として、ITIL書籍には次のようなものが挙げられている。
上記はすべて、観点としての戦略を下支えし、戦略から戦術を生み出すための基準となるものである。
話はそれるが、筆者が住んでいる地方の、ある総合家電量販店のスローガンは「やってみます」というものである。「やります」ではないところがウマい。できないことがあるかもしれないけどごめんね、でも顧客から望まれたことはとにかくやってみます、というものである。これは「地域一番店になる」というような「観点ベースの戦略」を、「パターンベースの戦略」に置き換えたものだといえるだろう。
※本連載の用字用語については、ITILにおいて一般的な表記を採用しています。
谷 誠之(たに ともゆき)
IT技術教育、対人能力育成教育のスペシャリストとして約20年に渡り活動中。テクニカルエンジニア(システム管理)、MCSE、ITIL Manager、COBIT Foundation、話しことば協会認定講師、交流分析士1級などの資格や認定を持つ。なおITIL Manager有資格者は国内に約200名のみ。「ITと人材はビジネスの両輪である」が持論。ブログ→谷誠之の「カラスは白いかもしれない」
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