IBMなどのパートナーが「Business Suite 7」でSAPと協業コスト削減を支援する

IBM、Atos Origin、Capgemini、Wiproは「SAP Business Suite 7」のローンチパートナーとしてSAPの発表会に参加した。パートナー各社はコンサルティングリソースを提供するとともに、同製品のマーケティングに協力する。新スイートは企業の業務の効率化とIT経費の削減に役立つという。今夏に一般向けとしてリリースする予定だ。

» 2009年02月06日 07時15分 公開
[Nicholas Kolakowski,eWEEK]
eWEEK

 SAPは2月4日、ニューヨークの本社にIBMなどのローンチパートナーを招いて開催した発表会で「SAP Business Suite 7」を披露した。このスイートは、企業が効率的かつ柔軟なビジネスプロセスを低コストで作成するのを支援する。

 IBMとSAPは長い協業の歴史があり、最近では、エンタープライズ向けメッセージング/コラボレーションアプリケーション「Alloy」を共同開発している。この製品は3月にリリースされる予定だ。

 SAP Business Suite 7はモジュラー型のソフトウェアライブラリであり、SAPによると、日常的な業務プロセスを効率化すると同時にIT管理コストを削減できる同製品は、今日の経済危機と格闘している企業に恩恵となるという。

 SAPは以前から、企業のコスト削減を支援することを目的とした製品の開発に取り組んできた。同社は今週、エネルギー供給企業のコスト削減のソリューションでLandis+Gyrと提携を結んだ。

 SAP Business Suite 7は、SAP Business Suite 6のアップグレードとなるもの。新スイートの開発には15カ月の期間を要したという。2008年11月21日に限定リリースを行い、今夏に一般向けにリリースする予定だ。

 同スイートの立ち上げに参加してきたIBM、Capgemini、Wipro、Atos Originの各社は、SAP Business Suite 7が広範なユーザーベースにリリースされた時点で、認定コンサルティングリソースを提供するとともに、共同マーケティングを展開する予定だ。

 SAPのレオ・アポテカー共同CEOは同製品のデモに先立ち、「これはエンタープライズコンピューティングの未来の姿だと考えている。企業が将来どのように進化すべきかについて、われわれは明確なビジョンを持っている。世界はビジネスネットワークに向かって進化しつつあるとわれわれは考えている」と述べた。

 SAPによると、ユーザーがソリューション全体をアップグレードしなくても、必要な機能だけを選んで購入できるBusiness Suite 7の「強化パッケージ」は、ITコストの削減に大きく貢献するという。

 Business Suite 7のもう1つの重要な特徴が「バリューシナリオ」である。これは、効率を改善し、問題を解決するために段階的に導入可能なエンドツーエンドのビジネスプロセスをユーザーに提供するというもの。

 バリューシナリオに含まれる統合製品開発機能は、企業の複数の部門にまたがるプロセスをシームレスに作成するBusiness Suite 7の能力を示すものだ。

 この機能のデモでは、Business Suite 7のエンドユーザーのダッシュボード画面が紹介された。ダッシュボードには、売上高や利益などの指標が時系列的に示された。また、顧客が製品についてTwitterでどんな発言をしているかを見ることもできた。

 このデモで例として取り上げられたBusiness Suite 7のエンドユーザー(GPS装置のメーカー)は、自社の最新製品の表示画面の欠陥についてTwitterのチャットが増えていることに気付いた。このユーザーは、技術部門の画面に移動して製品のコンポーネントを確認し、問題を特定した。さらにそこから販売、財務、供給管理部門の画面に移動し、実際に問題を修正するところまで示された。

 この分析とプロセスの連携機能により、意思決定者は発生している問題に素早く対応することができる。これは時間と経費の節約にもつながる。

 Business Suite 7は、ユーザーがSOA(サービス指向アーキテクチャ)を利用して新たなビジネスチャンスを捉えるのを支援する機能も備える。デモで示された例では、エンドユーザー(カリフォルニアの小売業者の地域マネジャー)がダッシュボードを使って自社店舗近辺の郵便番号を分析し、高額所得世帯の資産状況を調べた。このユーザーは次に、店舗用のクーポン券をセットにした「ウェルカムキャンペーン」を作成し、事前にデータマイニングによって選び出したターゲットグループへキャンペーン案内を送付した。その後にこのユーザーがダッシュボードを確認すると、売り上げが増加したことが示されていた。

 「CEOが手に入れるのは、エンドツーエンドのビジネスプロセスである」とアポテカー氏は語った。

 ビジネスパフォーマンスの最適化とITコストの削減にフォーカスしたBusiness Suite 7は、厳しい経済環境の中で経費節減策を模索する顧客に訴求するだろう。昨今の景気悪化はSAPにとって、うれしい偶然の一致となったようだ。同社は2006年末にこのソフトウェアスイートの開発に着手したとき、モジュラー方式で必要な機能を選んで利用できる経済的なシステムが長期的なトレンドになるという予測に賭けた。

 「9月15日にLehman Brothersが破綻した後でいきなり、時代に対応した製品の開発を決めたわけではない」とSAPのCRMオンデマンド部門でスイートソリューション管理を担当するリチャード・カンピオーネ上級副社長は取材で語った。「経済状況が、われわれが以前から向かっていた方向に合致したのだ」(同氏)

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