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ストレージ仮想化に対する「3つのアプローチ」 旧機種の活用と自在な拡張

ストレージを運用管理する上で最も効果を期待できるのが「デバイスの仮想化」、「容量の仮想化」である。今回は具体的な効果を紹介するとともにストレージ仮想化に対する異なる3つのアプローチを紹介する。

» 2009年02月24日 08時00分 公開
[大神企画,ITmedia]

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 システムで扱うデータ量が指数関数的に急増していることは、すでに多くの企業が実感しつつある事実である。3年間のデータ量の増加を考えてストレージを追加導入したのに、わずか1年で容量の限界を迎えてしまったという企業も少なくない。急激な容量増は、従来のストレージにディスクを増設しただけでは追いつかず、結果的に別のストレージを追加導入することになる場合もある。また、思い切って容量単価を削減できる新機種に入れ替えるという選択をする企業も少しずつ増えている。

 しかし、企業システム内に多種多様なマルチベンダーのストレージデバイスが混在することは、とても大変なことである。機種によって異なる運用管理を行わなければならないし、段階的に新機種へ移行するのも容易なことではない。

 そうした課題の解決策として注目されているのが、ストレージデバイスを仮想化する技術である。これは、ストレージ仮想化機能を備えたデバイスの配下に複数のストレージを接続し、それらをまとめて単一のストレージプールとして扱えるようにするものだ。

 ストレージデバイスの仮想化には、多くのメリットがある。マルチベンダーのストレージを統合的に扱えるので、古いストレージを無駄にすることなく有効に利用できる。サーバアプリケーションからは物理的なストレージデバイスの存在が隠蔽されるため、サーバを意識せずにストレージの構成変更や拡張することが可能になる。

異なる3つのアプローチ

 ストレージデバイスの仮想化を実現するには大きく3つの手法があり、ストレージベンダーによって異なるアプローチを取っている。

 最も早く登場したストレージデバイスの仮想化技術の手法は、SANに仮想化機能を持ったアプライアンスを接続するというものだ。このアプライアンスは、サーバ側から見るとストレージのように振舞い、SANに接続されたストレージをコントロールする機能を備えている。

 例えば日本IBMの「IBM System Storage SAN Volume Controller(SVC)」は、ストレージ仮想化アプライアンスの代表的な製品だ。同製品は2003年に発売され、すでに5年以上の実績がある。その間、マルチベンダー対応を進め、現在は他社製品を含め150種類以上の外部ストレージをサポートするなど、高い汎用性を備えている。

 ストレージ仮想化アプライアンスは、すべてのI/Oがアプライアンスで行われるため、遅延が発生することがある。これがアプライアンスの欠点だと言われているが、複数のバスと大容量キャッシュメモリの搭載によって、そうした欠点を回避する傾向にある。IBMのSVCも同様だ。

 2つ目の手法として挙げられるのが、スイッチベースのストレージ仮想化だ。SANではファブリックスイッチを導入することが一般的だが、そのスイッチにストレージ仮想化機能を持たせ、SANに接続された複数のストレージを一元的に扱える仮想的なボリュームを実現しようというもの。I/Oの遅延がなく、SANの構成との親和性も高いという特長がある。

 ストレージ仮想化に対応したスイッチの代表的な例としては、富士通の「ETERNUS VS900」がある。これは、ブロケードのSANスイッチハードウェアに、ブロケードと富士通が共同開発した仮想化ソフトウェアを組み合わせたものだ。EMCジャパンの「EMC Invista」も同様のアプローチで、シスコまたはブロケードのスイッチにストレージ仮想化機能を実現するEMC独自のソフトウェアを組み合わせている。いずれも、他社製品を含む外部ストレージもサポートする。

 もう1つの手法は、アレイコントローラにストレージ仮想化機能を搭載したもの。日立の「Hitachi Universal Storage Platform V」が代表的な製品だ。この製品は、ストレージのコントローラ自身に外部ストレージデバイスを接続する機能を持たせている。強力な性能を持つコントローラはI/Oの負荷をロードバランスし、外部ストレージへのアクセス性能も向上させるという特長もある。同様に、日本HPの「HP StorageWorks XP」もコントローラにデバイスの仮想化機能を持たせた製品で、同社のEVAファミリ、MSAファミリをはじめ、他社製品を外部ストレージとして接続できる。ちなみにHPは、「HP StorageWorks Storage Virtualization System(SVS)」というストレージ仮想化アプライアンスを過去に製品化していたが、現在は販売を終了している。

ストレージ仮想化の異なる3つのアプローチ(日立資料より) ストレージ仮想化の異なる3つのアプローチ(日立資料より)

システムを止めずに容量拡張

 ストレージの運用で最も負荷の高い管理作業と言えるのが、ストレージの拡張である。容量を増設する際には、物理ディスクを追加する作業だけでなく、サーバがそのディスクを利用できるように論理的な拡張作業を行う必要がある。だから、物理的な作業はストレージを停止する必要がなくても、サーバが新しいストレージ領域を認識するようにシステムをいったん停止させなければならない。

 こうした運用上の欠点を補うために注目されているのが、容量の仮想化を実現する技術だ。「シンプロビジョニング」と呼ばれることもある容量の仮想化は、物理的なストレージの容量にかかわらず、あらかじめ仮想的に巨大な容量の論理ボリュームを作成しておけるというもの。サーバのアプリケーションには、すべての割り当て領域を認識させており、必要に応じて物理ディスクをオンラインで増設できる。システム構築時に将来のストレージの容量を見越した先行投資の必要がなくなり、利用率に合わせて効率的なストレージ運用を実現できる。また、ボリュームに格納されているデータ量を監視して容量の増加に応じたボリュームの拡張が不要に成るなど、運用管理業務も簡素化できる。

 容量の仮想化は、ストレージ仮想化における大きな効果の1つと考えられており、ストレージベンダー各社は技術開発にもれなく取り組んできた。アレイベースでストレージデバイスの仮想化を実現する日立やHPの製品はもちろん、日本IBMの「IBM System Storage」、NECの「iStorage」、富士通の「ETERNUS」、EMCの「CLARiX」などは、すべて容量の仮想化をサポートしている。また、デルのiSCSIストレージ「EqualLogic PS」のように、容量の仮想化を標準機能としている製品もある。さらに、ストレージをコントロールするOSに容量の仮想化機能を持たせた製品もあり、Solaris ZFSに対応するサンの「Sun Storage 7000」、独自OSである「Data ONTAP」を搭載するネットアップの「FAS6000」などがこれに相当する。

ZFS Hybrid Storage Pool サンではZFS Hybrid Storage Poolという考え方に基づき、ストレージを階層化された単一プールとして管理する。例えばSun Storage7000は、製品に実装されたSATA、フラッシュメモリ(リード/ライト)、DRAMなどのデバイス属性や機能と連携し、リソースコントロールのために単一な管理形態を提供する

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