Microsoft Azureが提供するクラウドへのパスAmazonと真っ向勝負(1/3 ページ)

技術分析:MicrosoftはAzureでクラウドコンピューティングの世界に足を踏み入れ、Amazon.comやGoogleと真っ向から競合することになった。

» 2009年03月03日 08時00分 公開
[Jeff Cogswell,ITmedia]
eWEEK

 技術分析:MicrosoftはAzureでクラウドコンピューティングの世界に足を踏み入れ、Amazon.comやGoogleと真っ向から競合することになった。Amazon.comと同様、Microsoftも自社の分散データセンターで実行するソフトウェアシステムを構築、アプリケーション開発者にWindows Azure SDK(現在はCommunity Technology Preview版)の提供を開始した。eWEEKラボでは、今回から数回に分けて、このAzure SDKの内容を詳細に検討していく。

 本稿はMicrosoftが2008年にロールアウトしたクラウドコンピューティングプラットフォーム「Azure」に関する一連の分析記事の第1回である。Azureは比較的大きな技術であり、この先も膨大な数の関連書籍が発行されるだろう。言い換えれば、たった1つの記事で、Azureのすべてをカバーすることは不可能だ。それを承知の上で、ここではAzureの全体像を俯瞰し、読者に最新の情報をお伝えしよう。第1回目の今回は、SDKに付属する基本スターターサンプルを通して、Azureのさまざまなコンセプトを解説したい。

 この先読み進むにあたって、読者にはVista(Service Patch 1適用)またはWindows Server 2008、およびVisual Studio 2008を用意していただきたい(オンラインドキュメンテーションによると、Visual Web Developer 2008 Express Editionでも可)。また、SQL Server 2005 Express、またはSQL Server 2008 Expressも必要となる。さらに読者は、Azure SDKとAzure Tools for Visual Studioも入手する必要がある。

Azureの基盤

 Azure(や他の多くのクラウドプラットフォーム)の基盤の1つは、「地理的に分散されたサービス」というコンセプトだ。これにより、ユーザーは地球上のさまざまな場所で、地理的に比較的近いところにホストされたサービスを利用することが可能になる。こうした仕組みには、応答時間の短縮のほかに、ただでさえ混雑気味のインターネットにおいてデータ転送を最小化できるなど、多くの利点がある。

 Azure向けに開発したソフトウェアは、いわゆる「コンピュートサービス」と呼ばれ、基本的にはサーバーサイドコード(ASP.NETコードなど)が置かれたAzureの下で実行されるソフトウェアの一部となる。

 Microsoftは「ロール」という言葉を、実行可能な単一のコードコンポーネントという意味で用いている。例えば、ASP.NETアプリケーションを作成すれば、それは1つのロールとなり、「Webロール」と呼ばれる。さらに、バックグラウンドで実行する追加的モジュールを作成すると、それらは「ワーカーロール」と呼ばれる。こうしたロールを組み合わせて、1つのコンピュートサービスが構成される。

 SDKには、Azureクラウドへソフトウェアを実際にアップロードする前に、開発者が自分の環境でチェックできる便利な2つのツールが含まれる。いずれもAzureサービスのイメージを模倣したものだ。1つはDevelopment Fabricで、もう1つはDevelopment Storageである。

 Development Fabricは、基本的にはローカルの開発環境でAzureそのものをシミュレートするもので、実行中のサービスを管理するためのツールも含む。

 Development Storageは、サーバサイドストレージサービスをシミュレートする。Azureには必要に応じてデータをストアできるエリアが2つある。1つはSQL Serverのクラウドバージョン、SQL Data Servicesによって提供される従来型のリレーショナルデータベースだ。そしてもう1つは、Storage Servicesと呼ぶ非リレーショナルなフラットストレージシステムである。Development Storageは開発環境において後者のストレージ形式をシミュレートする。

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