企業ITサービスを支えるブレードサーバ

プロセッサとともに進化するブレードサーバのラインアップNehalem登場前夜

インテルは、2009年3月末(日本では4月)に「Nehalem」という開発コード名で呼ばれていた新しいプロセッサ「Xeon 5500番台」(Nehalem-EP)の発表すると予測されている。これを機にサーバ製品のラインアップを更改するベンダーも多く、またIBMによるSun買収報道が出るなど、ベンダー同士が合従連衡する動きも活発化してきた――。

» 2009年03月24日 16時20分 公開
[大神企画,ITmedia]

まもなく登場するNehalemとは?

 Xeon 5500番台は、まったく新しいマイクロアーキテクチャを採用したサーバ向けプロセッサだ。プロセッサそのものだけでなく、周辺のサブシステムにも大きく手が加えられており、差し詰めXeonのフルモデルチェンジと呼べるほどの進化ぶりである。

 Xeon 5500番台には多くの特徴があるが、中でも大きく変化したのがメモリアクセスの部分。従来のXeonプロセッサではFSB(Front Side Bus)というバスがプロセッサとメモリをつないでいたが、Xeon 5500番台ではFSBが「QuickPath インターコネクト」に置き換えられた。QuickPath インターコネクトは、メモリコントローラがプロセッサに統合されており、リンク当たり最大25.6GB/sの帯域幅を備え、DDR3メモリをサポートするなど、メモリアクセスのパフォーマンスが大きく向上している。ちなみに、Xeon 5500番台では2ソケットのシステムで最大18スロットのDDR3メモリに対応。8ギガバイトのメモリモジュールを搭載すれば、サーバの最大メモリ容量は144ギガバイトにもなる。大容量メモリは、サーバ仮想化環境にとって最適だ。

 プロセッサを高速化する新しい技術も搭載されている。「ターボブーストテクノロジー」は、状況に合わせてプロセッサの周波数を上げて処理速度を向上させるというもの。通常は定格周波数でプロセッサを動作させるが、一定の条件下で必要に応じてプロセッサをオーバークロックにするわけだ。稼働するコアの数を絞り、さらに高い周波数で動作させることもできる。この機能は、すべてが自動実行される仕組みである。また、マルチスレッドアプリケーションのスループットと応答性を高める「ハイパースレッディングテクノロジー」が復活して搭載されている。

 一方で、省電力化を実現する技術革新も行われた。Xeon 5500番台に搭載されたインテリジェントパワー機能は、コア単位でパワーゲートを実装しており、アイドル状態のコアは消費電力をほぼゼロに低減できるという。プロセッサの負荷状況に応じてシステム全体の電力管理を行う自律的な省電力機能も大きな特長だ。

Nehalemに合わせて新製品が続々

 Xeon 5500番台の登場に合わせ、サーバベンダーの動きも急だ。最初に発表したのは、日立。同社は、ブレードサーバ「BladeSymphony」に「BS2000」という新しいサーバラインアップを追加し、その最初の製品としてXeon 5500番台(ただし、日立の公式発表では「次世代インテルXeonプロセッサ」としてプロセッサの正式名称は出されていない)を搭載した2ソケットのブレードを発表した。また、小型高集積モデルの「BS320」にもXeon 5500番台の2ソケットブレードを追加している。

 また、サンがXeon 5500番台に合わせて新しいブレードサーバのラインアップを計画している。デルも、インテルの発表に合わせて新しいサーバの投入を予定しており、Xeon 5500番台を搭載した現行のシャーシ向けブレードが登場するという。同様に、サーバベンダーの多くは、現行のラインアップに追加する形でXeon 5500番台を採用する見込みだ。

 Xeon 5500番台の投入により、各サーバベンダーが特に注目しているのは、サーバ仮想化ソリューションへの対応である。本連載の中でも紹介したが、多くのサーバベンダーは、現行のラインアップにおいては、クアッドコアのAMD Opteron(「Shanghai」という開発コード名で呼ばれていたもの)をサーバ仮想化に適したプロセッサだと考えてきた。これは、同プロセッサに搭載された広帯域で大容量のバス技術「HyperTransport」により、仮想化環境において高いパフォーマンスを実現していたからだ。しかし、HyperTransportに対抗するQuickPath インターコネクトがXeonに搭載されたことで、パフォーマンスの差はなくなる。

 さらに、Xeon 5500番台では稼働中の仮想マシンをネットワーク上で動的に移動できるライブマイグレーション機能をサポートしており、これもXeon 5500番台によるサーバ仮想化ソリューションが注目される理由になっている。

 なお、インテルとAMDとの直接的な連携は難しいかもしれないが、OpteronからXeon、またはその逆のライブマイグレーションも、サーバベンダーや仮想化ソフトウェアベンダーの努力によって、近いうちには実現されそうだ。より快適なサーバ仮想化環境を実現するためのハードウェア基盤は、いよいよ強固なものになっていきそうだ。

2009年はプロセッサの動向に注目

 ブレードサーバに搭載される新しいプロセッサを巡っては、2009年は動向が楽しみな年になりそうだ。まもなく発表されるNehalemアーキテクチャでは最大8コアのプロセッサが予定されているし、AMDも「Istanbul」という開発コード名で呼ばれている6コアのOpteronプロセッサを年内に投入すると言われている。

 また、サーバ統合プラットフォームとして、UNIXサーバからのマイグレーションを促すRISCプロセッサを搭載したブレードの動向も気になるところだ。現時点においては、IBMがPOWERやCell、サンがUltraSPARCを搭載したブレードを投入しており、サードパーティからはIBMの「BladeCenter」向けの米Themis Computerのブレードが発売されている。いずれも、IAサーバに比べると数的には微々たるものだが、UNIXをブレードサーバ上に統合したいというニーズには十分に応えている。今後はこうした選択肢が増えていくのか、例えば「HP BladeSystem」(ProLiantに限る)でSolarisのサポートを発表したHPは今後、UltraSPARCのブレードも出してくるのか、あるいはUltraSPARCを生産する富士通はXeonのみを提供するという従来路線を変更してくるのかなど、関心事は後を絶たない。

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