Solaris、ZFS、SSDで差別化を図る――SunのNehalemサーバコモディティ市場で示す存在感

Nehalem搭載サーバ製品群や冷媒式冷却ドアを発表したサンマイクロシステムズに、国内での展開について話を聞いた。

» 2009年04月17日 08時00分 公開
[聞き手:石森将文,ITmedia]

 既報のとおりサン・マイクロシステムズ(以下サン)は、米国および日本においてインテルXeon5500番台、コードネーム「Nehalem-EP」とよばれるプロセッサを搭載したサーバ製品群を発表している。新製品は全て、SSDとオンボードのフラッシュメモリを備えるという特徴を持つ。国内での展開について、サンの的場謙一郎氏に話を聞いた。


――サンの新サーバ製品群のポイントは。

サン・マイクロシステムズ 的場 謙一郎氏

的場氏 今回の製品ラインアップに関しては、ただ「新しいプロセッサを搭載しました」というだけではない特徴を持たせています。それは「サーバとストレージの融合」です。具体的には、今回発表した製品の1つである「Sun Fire X4275」では2Uサイズの筐体に3.5インチSASドライブ(またはSSD)を12台搭載できます。毎分1万5000回転のSASドライブとSSD、そしてSolarisのZFSを組み合わせることで、高速で信頼性の高いコンピューティングスタイルを届けられると考えています。ディスクインテンシブな環境に対する柔軟性も増すでしょう。またスケールアウト型の構成を前提とした低価格サーバ「Sun Fire X2270」には、メモリ型SSD(近日中にサンより提供予定)を搭載できるメモリスロットを用意しました。通常1Uの場合SATAディスクを4台まで搭載できますが、これはディスクスロットを潰すことなく、将来的に高性能なストレージ拡張をできる余地があるということ。ストレージをうまく活用できるサーバ、これがサンの新ラインアップの特徴といえます。

 もう1つ特徴を述べるとすれば、HPC分野への注力が挙げられます。例えば2ノード分を1枚のブレードに収めた「Sun Blade X6275」では、Infinibandをオンボードで搭載しました。これは競合と比較しても、クラス初となります。またこれまでも、仮想環境でパフォーマン上注目されるメモリ搭載量についてサンは常に実装できる最大スロット数を目指してきました。今回も、中心のサーバラインアップで18スロットを搭載しており、1Uサーバについても同じ18スロットを用意しています(2ノードを1筐体に集約したx6275は12スロットとなる)。

 これら新ラインアップによって、ユーザーにさらなる高集積なサーバ環境を届けられると考えています。しかし、そうなると問題になるのがサーバ、そしてデータセンターの「冷却効率」です。この問題に対する1つの回答が、今回発表した「Sun Cooling Door」です。ブレードのラックにドアとして取り付けられる冷媒型冷却装置で、暖気が排気された時点で、集中的に冷却できます。

 10Gbイーサネットモジュールとして発表した「Sun Blade 6000 Virtual Network Express Module(Virtual NEM)」については、現在VMware ESX向けのドライバを開発しています。対応後は仮想環境でvMotionなどの機能を利用でき、利便性が向上するでしょう。

――Nehalem-EP搭載サーバの市場への浸透ペースをどう見るか。

的場氏 Xeon5500番台のパフォーマンスについては、非常に高いスコアが出ています。しかし懸念点があるとすればLinuxへの対応でしょう。例えばRed Hatの場合、サンのサーバはバージョン4および5に対応していますが、ベンダーによっては4をサポートしていないケースもあります。またTurbo Boostや電源管理などNehalem-EPが持つ機能を最大限に生かすには、OS側でのサポートが必要です。Solarisではインテルの協力のもと対応を果たしましたが、Windowsはいずれ対応するにせよ、Linux系のOSがどこまでサポートしてくるかという懸念は残るでしょう。未対応のままでも「早いプロセッサを積んだサーバ」という価値は揺るぎませんが、せっかく有為な機能をプロセッサが実装しているのであれば、OSのサポートのもと完全に生かしたい、というのがユーザーの心境でしょうから。

――国内への拡販プランについては。

的場氏 Solaris、そしてZFSによる運用は、SSDとHDDを組み合わせて使用した場合、その切り替えやチューニングを意識せず高いパフォーマンスを享受できます。ユーザーの中にファイルシステムがI/Oのボトルネックになっていた環境があるとすれば、その問題を解決できる。ほかのOS環境との差別化という意味で、この点は打ち出していきます。幸いなことに、外資国産問わず主要なサーバベンダー各社がSolarisに対しコミットしており、またSSDも一般化しています。(サンのハードウェアでなくとも)SolarisでSSDのパフォーマンスをうまく引き出してくれればよいとわたしも思いますが、そこがうまく使われないようでしたら、サンとしてもSolarisの良さ、SSDの持つ意味という物を強調していきたいと考えています。

 また景気という意味では、製造業については投資の停滞が見られますが、官公庁や教育機関、またライフサイエンスといった分野についてはすぐに景況に影響される分野ではありません。もともとサンが強みを有する市場でもあるため、注力していきます。また昨年、ダイワボウ情報システムとパートナーシップを締結しました。そこに連なる2次代理店も含めると、販売ネットワークの拡大は大きい。この半年で目に見える形で効果が表れています。

サーバ製品においては、機械部品であるファンの故障に留意する必要がある。サンの製品では、ファンだけを交換できるよう、該当部分を簡単に開ける(写真=左)、サンから発売予定のSSDを実装できるCF型メモリスロット(写真=中)、ファンからの冷却用空気は、プラスチックで作られた「空気の通り道」を通って発熱箇所を冷やす。無駄な空流は発生しない(写真=右、すべてクリックで拡大)

 「x86サーバという製品市場は、ベンダー間の違いを示すのが難しい。しかしサンは、Solaris、ZFS、SSDで特徴を出していく」と的場氏は話す。コモディティといえる市場においても差別化できているといえそうだ。

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