Windows 7 RCの提供開始、企業ユーザーの移行を狙う機能を満載国内の一般向けは5月7日

Microsoftは開発者向けにWindows 7 RCの提供を始めた。アプリケーション互換やセキュリティ機能の拡充が目玉になるという。

» 2009年04月30日 22時02分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 米Microsoftは4月30日、次期クライアントOS「Windows 7」の製品候補(RC)版を開発者向けに公開した。国外の一般ユーザーには米国時間5月5日から提供するが、国内では5月7日からとなっている。

 公開に先立って行われたアジア太平洋地域向けの記者説明会では、製品管理グループ担当上級副社長のマイク・ナッシュ氏が電話会議を通じて、RC版で追加した機能概要や市場展開の方法を紹介した。

Windows 7 RCでの推奨スペック

 ナッシュ氏は冒頭、「Windows 7のリリースに向けた準備が非常にうまく進んでいる」と話した。Windows 7のプロジェクトには1万社以上の企業が参加し、アプリケーションやデバイスドライバでの互換性開発に注力している点を強調。同氏によれば、Vista SP1で動作するほぼすべての製品がWindows 7 RCでも動作し、一部のアンチウイルス、ファイアウォールやXP向け製品が動作しないものの、互換性を確保するための施策を準備しているという。

 「これはVistaでの経験を踏まえたもので、Windows 7ではβ段階からパートナーが十分な開発および検証が行える体制を整えており、Windows 7自体もVistaをベースとしているためパートナーが新たな対応をしなくていいように配慮した」(同氏)

新機能は企業ユーザーの移行を重視

 互換を高める狙いからWindows 7 RCで新たに追加した機能の1つが、Windows Virtual PC for Windows 7でXPを仮想的に動作させることができる「Windows XP Mode」だ。

 Windows XP Modeは、Windows 7の全エディションで使用できるが、標準で使用できるのはProfessionalとUltimateのみで、それ以外のエディションでは別途、XPのライセンスを導入する必要がある。利用するには、まずVirtual PC上でXP向けのアプリケーションをインストールする。インストール後はスタートメニューもしくはデスクトップのアイコンをクリックするだけで起動できる。

Windows XP Modeの起動
Windows 7でXPのウインドウが開く

 ナッシュ氏は、「新機能は特に予算不足などの制約でWindows 7にカスタムアプリケーションを移行できない中小企業を対象にしている」と説明。大企業では、デスクトップの集中管理ツール「Microsoft Desktop Optimization Pack」を利用して、Windows XP Mode用のVHDファイルを作成、配布するのが望ましいとしている。

 なお、Windows 7ではXP以前のOS用アプリケーションを実行するための互換モードがβから提供されているが、Windows XP Modeは互換モードでも使用できないアプリケーションを実行させるための最終的な手段になるという。

 このほか、Windows 7では企業での運用管理を容易にする目的で「Direct Access」「BranchCash」「BitLocker To Go Drive Encryption」という3つの機能を提供する

 Direct Accessは、VPN接続なしでリモートのユーザーが企業内ネットワークへアクセスできるようにするもので、管理者側からはリモートマシンに対する管理やアップデート操作、ヘルプデスクなどの手段を提供する。また、Powershellを活用すればこれらのプロセスの大半を自動化できる。BranchCashは、一度ダウンロードされたデータを地方拠点側に蓄積しておくことで、配信作業の手間を緩和する。

 BitLocker To Go Drive Encryptionは、HDDのみを暗号化するBitLockerの機能を拡張したもので、USBメモリなどの外部メディア内のデータを暗号化する。復号にはパスワードやスマートカードを用いる仕組みで、PCを紛失した場合の情報漏えいリスクを軽減化する。なお、Direct AccessとBranchCashを使用するにはWindows Server 2008 R2が必要になる。

起動時はXP並みの軽さ

 マイクロソフトのコマーシャルWindows本部長の中川哲氏は、Windows 7の使用感について「メモリが1Gバイト以上であれば軽快に動作し、1.5Gバイト以上なら非常に快適だ」と話した。同氏によれば、起動時に実行されるサービス数は、XPが41種、Vistaが61種類であるのに対してWindows 7では49種となり、最新OSでありながら起動時間の高速化を図ったという。

 「Windows製品と担当して10年になるが、Windows 7 RCは過去の製品に比べて最もパフォーマンスと品質が高いというのが率直な感想だ」(同氏)

 今後の展開について、ナッシュ氏と中川氏は「RCのコアコンポーネント開発に注力する」とだけ話し、RTM版(製造工程向け)や製品版のリリース時期、価格について明言しなかった。

 また、一部のOEM向けに提供される見込みのStarter Editionでは、ウイルス対策ソフトウェアなどを除いて、原則として3種類までのアプリケーションしか実行できないよう制限することも明らかにした。具体的にどのような方法で制限するかについては、RTMをリリースするタイミングなどで発表する。

 RCのこのほかの新機能では、ホームグループで共有するファイルをインターネット経由でも利用するものや、同機能を利用してマルチメディアコンテンツを利用できる「Remote Media Streaming」などを提供。これらの機能を使用するには、Windows Live IDなどを使用するという。

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