Opera UniteはP2P的な手段を提供するが、ユーザーはすべてのトラフィックをOperaのプロキシサービスに通さなければならず、またオープンソースではない点が批判を呼んでいる。
FirefoxやFlockなどのオープンソース技術の支持者で、FactoryJoeというハンドルネームでブログを書いているクリス・メッシーナ氏は、昨日(6月16日)付のブログ記事で「Opera Unite」を徹底的にこき下ろした。この記事に関して、同氏のブログのほか、FacebookやFriendFeed、Redditなどのサイトに200件を超えるコメントが寄せられた。これらのコメントは、TechMemeサイトにまとめられている。
わたしも昨日、Uniteに関する紹介記事と画像をeWEEKに掲載した。メッシーナ氏は、Opera Softwareが発表した製品を次のように要約している。
既に出回っているFlockと同様(おっと、自慢になってしまった。自制しなくては)(訳注:メッシーナ氏はFlockの開発に携わった)、Operaはソーシャルネットワーキングの流行に乗じて、その機能をブラウザに埋め込もうとしている。ユーザーのコンピューティング体験を個人的に拡張できるようにするためだ。同社が採用した手法は、Webサーバ機能をブラウザに組み込むことにより、ファイル、音楽、写真、投稿メモ、チャットを友人(あるいはそのユーザーのアカウントのURLを知っている人――パスワードが必要な場合もある)と直接共有できるようにするというものだ。
メッシーナ氏は続けて、コンシューマー(Uniteが当初、ターゲットにしているユーザー)は、FacebookなどのSNSに人々の個人データが大量に保存されることを気にしてはいないと指摘する。さらに、Operaが自由主義を掲げるのであれば、なぜUniteはオープンソースではないのか、と同氏は疑問を投げ掛ける。「WebKitのおかげで、どんな企業(Mozillaを含む)でも、Webに開かれたパーソナルビューポートの市場をめぐる競争に参加できる今日、Operaプラットフォーム上で開発したいと思う企業があるとは思えない」と同氏は記している。
Ovum Researchのトニー・クリップス氏が昨日、Uniteについて電話でわたしに説明してくれたところによると、これは新しいNapsterのようなもので、P2P(ピアツーピア)コンピューティング機能をユーザーに提供するという。しかしメッシーナ氏によれば、確かにUniteはP2P的なネットワークを利用するが、ユーザーはすべてのトラフィックをOperaのプロキシサービスに通さなければならない。また、UniteのEULA(使用許諾契約書)には厳しい制限事項が記載されており、これは分散志向のP2Pの精神にそぐわない。
メッシーナ氏の投稿に対するコメント欄では、Operaの製品アナリストのローレンス・エング氏が早速、Uniteを弁護している。この説明は誤解の一部を解消するものだ。
わたしが伝えようとしたのは、自分のデータがどこに置かれ、どのように使われるかを決める選択の自由がユーザーに与えられるべきだということだ。彼らがFacebookやFlickrを選ぶ場合もあれば、データを自分でホストするという方法を選ぶ場合もあるだろう。Opera Uniteは、ユーザーが巨大データセンターというソリューションに依存しなくても済むようにするための手段だ。巨大なサーバが悪いからというのではなく、これらのサーバは(真に健全なオンラインエコシステムとしては)不十分なものであり、人々がいずれオンラインで行うと予想される多くの事柄に対して最適化されていないからだ。
Operaが熱狂的なオープンソース信者へのマーケティングで誠実さを欠いているかどうかという議論には、ここでは立ち入らないことにする。これはGoogle Watch(訳注:eWEEKに連載されているGoogleをテーマとしたシリーズ)のコラムであるので、斬新なリアルタイムコラボレーションプラットフォーム「Google Wave」を通じたGoogleの分散化のアプローチをメッシーナ氏が高く評価していることを指摘するにとどめたい。
Googleは賢明にも、真の分散システムを一から構築するためにWaveを立ち上げた。同社がWaveプロトコルで特許ライセンス方式を選択したのは、彼らが望んでいるのはネットワークを所有することではなく、ネットワーク上で競争することであることを示している。……(中略)……世の中を変革し、自由を増進するために数多くの約束をするだけで、何もしないというわけにはいかないだろう。しかしOperaにとって都合の悪いことに、新たな競争相手(Google)がそれをうまくやるための完ぺきな方法(Wave)を人々に示しているのだ。
しかし読者のジェイソン・グラント氏は、次のように指摘している――「Google Waveは(まだ)分散化していない。Waveを利用するというのは、機密性の高いデータをGoogleのサーバに保存することを意味するからだ。どんな企業もそういったことをしたいと思わないだろうし、しようともしないだろう」
問題は、Google Waveが実際にどういったものになるのかについては、「Google I/O」カンファレンスにおけるデモで示されたもの以外には分からないということだ。Waveが膨大なデータを飲み込む大食漢になり、プライバシー問題や独禁法の専門家たちが、それを2つに分割してしまえと騒ぐかもしれない。わたしはGoogleがうまくやると信じたいが、それはWaveが今年登場するまで分からない。
Uniteに対する否定的な報道が多いことを考えれば、ユーザー自身が試せるようにするために、GoogleがWaveのβ版のリリースを急ぐ可能性がある。Googleはオープンソースの利益になる正しい方法をOperaに示すのだろうか。
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