現時点におけるクラウドの成功事例は一般消費者向けおよび小規模企業向けのものが中心だ。Salesforce.comなどのSaaSでは大企業での活用事例もあるがまだ事例としては少数だ。
現時点のクラウドを企業の基幹系(ミッション・クリティカル)コンピューティングに活用するには多くの課題がある。その最大のものはやはり可用性だろう。例えば、Amazon EC2における可用性保証は99.95%である。これは、補助的な業務では十分かもしれないが、99.99%、場合によっては99.999%の可用性が求められることもある基幹系コンピューティングには不十分な値だ。
また、そもそも企業のポリシーあるいは当局の規制により重要データを企業の外部に預けることができないケースもある。特に海外のデータセンターに重要データを置くことも抵抗を感じる企業は多い。確実に言えることは、すべてのコンピューティング要件がクラウドで満足されるという世界はそうすぐには訪れないであろうということだ。当面の間、日本の一般的企業においては、スピード感が要求される周辺業務ではクラウド、堅牢性が要求される基幹業務は社内(オンプレミス)システムという使い分けが進んでいくことになるだろう。
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