Web2.0時代の終焉クリエイティブ主導型へ(2/2 ページ)

» 2009年09月27日 09時34分 公開
[エリック松永,ITmedia]
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Web2.5時代はクリエイティブ主導型へ

 Web2.0時代に確立されたAISASのプロセスをコントロールするためには、大きく3つの要素が必要となる。

  • 1. 戦略
  • 2. IT
  • 3. コンテンツ

 コンテンツは提供するサービスや商品そのものから、見せ方までかなりクリエイティブな世界になるはずだ。Web2.0時代は、戦略とITに重点を置いた傾向があった。Web2.0の世界が海のものとも山のものとも分からなかったため、特に戦略面に重点を置かざるを得なかったのが実情だろう。

 しかし、そこで学んだことは、Web2.0の世界の市場は国内にとどまらず、世界が市場になり、なによりスピードそして既成概念にとらわれない斬新性が必要であるということだ。戦略コンサルタントが悠長に分析し、不明確な指針をつきつけられて企業が頭を抱えながら理解するといった時間はもうない。

 また、絵に描いた餅は全く意味がなくなり、リスク回避型の無難さから脱し、サプライズを与えなければいかなくなる。そのためにはクリエイティビティーやセンスが厳しく要求される。クリエイティビティーやセンスは企業ではなく、個人に対しての価値が評価される分野であり、価値のある個人をどう取り込んでいくのかという取り組みも必要になる。価値ある個人を巻き込む仕組みが、現在ないというのも大きな問題点だ。

 機能だけでなく、UI、デザインが重視されるようになる。つまり、戦略やITに金を出す時代からセンスに金を出す時代へ変化していくのだ。これを前提にした場合、ゲームのプレーヤーが大きく変化する可能性がある。

 戦略を経営コンサルタント、実装をシステムインテグレーターが手掛けるといった上流から攻めていく従来の流れから、コンテンツ主導でIT技術と戦略を柔軟かつスピーディーに選択していくような流れが生まれてくるはずだ。

 期待としては、戦略重視の従来のコンサルティング会社に依存するのではなく、頭が柔らかくクリエイティビティー重視の例えば電通、博報堂のような企業が新たに戦略やITをトータルでサポートするようになるとか、インターネットを支えている高い技術を持ったプログラマーが自ら企画を立ち上げ、サービスを具現化するGoogleのような企業が、パートナーとして深くかかわっていくことが望ましい。

 企業のパートナーが戦略コンサルファームから広告代理店になるくらいの変革を起こさなければ、Web2.0の次の世界(仮にWeb2.5と呼ぶ)では勝ち残れないだろう。ここでのポイントは、広告代理店が良いと言っているのではなく、クリエイティブなモノを作り出せる人材を抱えているかどうかといことに尽きる。

 戦略コンサルファームがそのような人材を抱えるのであれば、それでもいい。とにかくWeb2.5以降のクリエイターは、デザイナーからプログラマーまで、表舞台に立つようにならなければならない。Web2.5時代、企業は戦略などに投資するのではなく、センスに投資し、早いサイクルで「トライ&エラー」を繰り返すようなモデルを確立しなければならない。意思決定のプロセスも改革が必要だし、なにより戦略重視の意識革命が必要なのだ。

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著者プロフィール:エリック 松永

エリック 松永

Berklee College of Music、青山学院大学大学院国際政治経済学研究科(修士)卒業。19世紀の米国二大発明家Graham Bellを起源に持つ米国最大の通信会社AT&Tにて、先進的なネットワークコンサルティングの領域を開拓。その後アクセンチュアにて、通信分野を柱に、エンターテインメントと通信を活用した新事業のコンサルティングをグローバルレベルで展開する。現在、通信業界を対象にビジネス・コンサルタントとして活躍中。著書に「クラウドコンピューティングの幻想」(技術評論社)がある。


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