メーリングリストでの議論においては、少数派の意見がいかにも大きな異議であるように見せることは簡単です。長々としたメールをメーリングリストに大量に投稿すればいいのです。これは議事進行妨害と似ていますが、反対意見が大きくなっていると思い込ませることにはより強力な意味があります。というのも、あまりにたくさんの意見が行きかうと「誰がいつ何を言ったのか」を追いかけるのが面倒になってしまうからです。「よく分からないけど、何だか重要なことを議論しているんだな」と本能的に感じ、騒ぎがおさまるまでしばらくおとなしくしている人が多くなるのです。
このような効果をうち消す最もよい方法は、何らかの証拠をもって「異議を申し立てている人がどれだけ少数であるかということ」「ほかの大半の人たちが合意しているということ」を明確に指摘することです。より状況を明確にするために、明確に意見は表明していないが恐らく多数派に合意するであろうと思われる人たちに個別に意見を聞いてみてもいいでしょう。
反対している人たちが自分の意見を故意に膨らませようとしているといったことを指摘するのはやめましょう。たぶん彼らはそんな気持ちはないでしょう。たとえ意図的にしているのだとしても、それを指摘したところで戦略上なんの利点もありません。あなたがすべきことは、単に実数を比較して示すこと。そうすれば、ほかの人たちは自分の実感とずれていることを分かってくれるでしょう。
この手法は、賛成か反対かがはっきりするような議論に関しては適用できません。この方法がうまくいくのは、誰かが大騒ぎしているものの大半の人にとってはそれが議論すべき問題なのかどうか判断できない場合です。議論をしばらく見ていて、それが(メールの数のわりには)あまり人々の気を引いていないものであってどうでもいい議論であると判断したら、それをはっきりと示してあげましょう。いわゆる“口うるさい少数派”が目立っているときには、あなたの投稿が一服の清涼剤となるでしょう。こんな場合、たいていの人はちょっと落ち込んでいます。「何てこった。大量の投稿があるのでたぶん重要なことを話しているんだろうけど、いったい何がどうなっているのかちっとも分かりゃしない」といった気分です。実際の議論が必要以上に大げさになりすぎていたことを説明すれば、彼らはそれまでの流れを見直して何が起こっていたのかを理解してくれるでしょう。
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よいフリーソフトウェアを作ることは本質的に価値のある目標です。その方法を模索している読者の皆さんが、本連載「オープンソースソフトウェアの育て方」で何かのヒントを得てくだされば幸いです。
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