クラウド時代のデータベース新潮流

クラウド時代のデータベースを考えるクラウド時代のデータベース新潮流(3/3 ページ)

» 2009年10月27日 08時00分 公開
[生熊清司(ITR),ITmedia]
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クラウド時代に求められるDBとは

 クラウドコンピューティングでは、どのようなDBMSが必要とされるのであろうか。基本的にはパブリックでもプライベートでもクラウドコンピューティングに場合は、1つのDBを複数のアプリケーションまたは複数の企業で利用することが重要なポイントとなる。従ってこれまでの単一のシステムや単一の企業が利用するよりもより高度な可用性、スケーラビリティー、セキュリティ、管理性、開発生産性が要求される。

 昨今クラウドコンピューティングではRDBMSよりもキー・バリュー型データストアが適しているという意見もあるが、これは必ずしも正しいとは思わない。確かにGoogleのような巨大なWebデータを格納し、分散処理によって検索キーワードにマッチするWebページのURLを高速かつ大量に返すといった操作は有効な方式である。

 しかしこの方式ではパフォーマンスを得るために分散を増やすとデータの更新がすべてのデータベースすべてに反映されるまでに多くの時間を要するため、アクセスのタイミングによっては、更新前のデータを返してしまうというリスクが伴う。企業システムで必要となるデータ整合性と高速なOLTP処理には現時点では利用できない可能性がある。

 認識しなければならないのは、クラウドコンピューティングとGoogleは同一ではないということである。現時点で多くのSaaSベンダーがOracleなどのRDBMSを利用していることからも、RDBMSの有効性は実証されており、クラウドコンピューティングのDBMSがキー・バリュー型とRDBMSのどちらが良いという二者択一ではなく、利用用途によって適しているものを正しく選択することが重要なのである。

 いずれにしても、クラウド時代におけるDBでは、分散処理技術と仮想化技術によるスケーラビリティーと柔軟性、そしてコストパフォーマンスが重要となると思うが、さまざまなベンダーがさまざま方式のDBMSで開発競争を行うことは、ユーザーにとっては選択の幅とより安価なDBMSの利用につながるというメリットにつながる。

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著者プロフィール:生熊清司(いくませいじ)

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外資系コンピュータメーカーの技術者としてDBMS製品を中心としたシステム提案活動を手掛け、1994年より日本オラクルでUNIX版Oracle7プロダクト・マネジャーとしてRDBMSを中心に製品マーケティングを担当した。データウェアハウスなどの最新機能を世界に先駆けて紹介した。2006年8月よりアイ・ティ・アールにてDBMS、SOAを含むITインフラストラクチャ製品を担当している。


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