プライベートクラウドは企業IT刷新の“真打”になるか――楽でセキュアでコスト削減を目指す

クラウドの選択はセキュリティ対策がカギに?SMB市場でも普及期(2/2 ページ)

» 2009年11月04日 09時30分 公開
[岡田靖,ITmedia]
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中堅中小企業に適したクラウドのスタイルは?

 「クラウドコンピューティング」として定義されるサービスは多彩だが、その範囲は、ASPやSaaS(Software as a Service)などのサービスとも部分的には重なっている。ASPやSaaSの延長線上である「パブリッククラウド」、すなわち多くの企業が共通のサービスを利用するという形態のサービスでは、いわゆる情報系システムに多い。普及の足掛かりとなっているのは、こうしたサービスであろう。情報系システムは、これまでもASP形態のサービスが広く利用されていた分野であり、すでに利用経験があったり、サービス自体の実績が多いこと、また利用シーンがイメージしやすいこと、などの理由が考えられるだろう。しかし、パブリッククラウドでは、セキュリティが特に顕著な不安となっているのもまた事実である。

 今後、クラウドコンピューティングの利用範囲は基幹系システムへと進んでいくことだろう。例えば財務会計、給与、販売管理といった、ERPのコンポーネントとなるようなシステムも、クラウドを活用することでユーザー企業にメリットがあるはずだ。当然ながら、情報系より基幹系の方が、セキュリティの課題はより大きなものとなってくる。

 中堅中小(SMB)といわれる規模を持つ企業であれば、グループ企業を含めた企業内に限定したクラウドサービスを自社で構築・運用する「プライベートクラウド」を選択することで、自社のセキュリティポリシーに準拠したクラウドコンピューティング環境が容易に得られる。プライベートクラウドも、既存技術でいえばSOA(サービス指向アーキテクチャ)やサーバ仮想化技術などの延長線上にある考え方であり、やはり同様に、こうした技術に取り組んできた企業にとって、手の届きやすいところにあるといえよう。実際、調査結果でも、売上規模の大きな企業の方がクラウドコンピューティングの利用に前向きな姿勢を見せている。

 一方、自社でクラウドコンピューティング環境を構築するほどの規模でない企業は、どのようなサービスを選ぶのが得策となるだろうか。

 すでにホスティングサービスなどで、「共用サーバ」と「専用サーバ」の選択肢があることを思い出してほしい。他社と同じサーバを利用するより、専用サーバを利用した方が、セキュリティ面などで有利な内容となる。同様に、ある程度はユーザー企業ごとに分離をするような内容のクラウドサービスであれば、通常のパブリッククラウドよりセキュリティレベルは高まるはず。

 近年、サーバやストレージ、ネットワークなどの仮想化技術が発達した結果、物理的には同一インフラ上にあっても、ほぼ完全なユーザー企業の分離が技術的には可能となっている。このような技術を駆使した「パブリック的なプライベートクラウド」サービスであれば、セキュリティレベルやサービスレベルの面でも、不安を軽減できるのではないだろうか。

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