さよなら、難しいコーチングビジネスマンの不死身力(2/3 ページ)

» 2009年12月22日 17時00分 公開
[竹内義晴,ITmedia]

問い掛ける――相手に考えてもらう

 コーチングでは頭の中に幾つもの質問を記憶し、「このパターンはこれ」と当てはめていくと考えがちだ。だがこれが難しい。そこで、ベースとなる質問を用意しておくといい。お勧めなのは、「あなたはどう思う?」という問い掛けだ。

 前述のようにスケジュールの遅延について相談を受けた場合、「スケジュールが遅れ気味で悩んでいるのだね。○○君(あなた)はどうしたらいいと思ってるの?」と返す。これをすると、相手は自然と自分で考えるきっかけが得られるのだ。

 かつてわたしがプロジェクトリーダーとして部下と交わしたやりとりの一部を紹介しよう。この問い掛けはシンプルだが、その効果は予想以上のものだった。

 部下だったA君は、システム開発を担当するプログラマーだった。A君は自分の頭で考えずに、すぐにアドバイスを求めてくる傾向があった。

 ある日要件定義書のチェックを頼まれた。A君の要件定義書はほかの資料からコピー&ペーストして作られており、間違いの部分が一目で分かるものだった。今までは資料の間違い部分を指摘していたが、A君に進歩が見られなかった。そこであなたはどう思うかという質問をベースに会話を続けるアプローチに切り替えた。

 資料に目を落とし、A君に「この資料の出来はどう(あなたはどう思う)? 100点中何点くらい?」と問い掛けた。「90点ぐらいですね」とA君。すかさず「じゃあ100点にするには、どうしたらいいと思う(あなたはどう思う)?」と返す。こうしたコミュニケーションを継続したのだ。

 ある日、A君が資料を持ってきた。だがいつもとは勝手が違った。質問のやりとりを繰り返したことで、A君も次の展開が読めてきたのだろう。「竹内さんにチェックしてもらう姿勢じゃなく、自分で考えるんでしたね。もう一度見直します」。彼はそう言い残して席に戻っていった。いつの間にか、彼は自分で考えるようになっていたのだ。

 このように、おのずと相手が自分で考えるようなコミュニケーションも、コーチングの1つだ。「あなたはどう思う?」と聞いてみる。ベースとなる質問を中心に相手と話をすることを考えると、コーチングの難しさを感じることはなくなるだろう。

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