ウィルコムが会社更生法を適用申請 「再建に期待」と久保田社長

経営再建中のウィルコムが会社更生法を適用を東京地裁に申請した。久保田幸雄社長は、「サービス維持と再建に全力を尽したい」と表明した。

» 2010年02月18日 19時45分 公開
[國谷武史,ITmedia]
久保田社長 会社更生法の適用申請について説明する久保田社長

 ウィルコムは2月18日、三菱東京UFJ銀行とみずほコーポレート銀行と連名で東京地方裁判所に会社更生法の適用を申請したと発表した。同日に企業再生機構およびソフトバンク、投資ファンドのアドバンテッジパートナーズへ事業再建の支援を正式に要請。負債総額は2009年末時点で2060億円としている。

 同社は経営環境の悪化から2009年9月24日に事業再生ADRによる再建を表明し、再建手法について債権者と協議を継続していた。18日午後に会見した久保田幸雄社長は、会社更生法の適用申請について、「協議段階から企業再生機構とソフトバンク、アドバンテッジパートナーズがスポンサー候補として協力的な提案を申し出ていただき、再建を迅速かつ透明性を持って実行するために、18日午前の取締役会で申請を正式決定した」と説明した。

 申請理由について久保田氏は、高速データ通信サービス「WILLCOM CORE XGP」への投資が負担となり、既存のPHSサービスとの両立が困難になったためと述べた。また、金融危機を発端にした資金繰りの悪化に伴って営業・マーケティング資金が枯渇し、新規契約獲得の伸び悩みと解約数の増加が追い討ちになったとの見方を示した。

 同日付で取締役全員が辞表を提出し、株主責任を明確にするために100%減資を実施すると表明した。なお、久保田氏は今後も管財人として同社にとどまる方針。顧客に対するサービスを従来通り継続し、取引先との一般商取引債権も従来通りの条件を継続するとしている。

 再建の見通しについて久保田氏は、「携帯電話やXGPをブロードバンドとすれば、既存のPHSはナローバンドという位置付けになる。ナローバンドは通信速度で劣るものの、コストパフォーマンスや安定性、品質に優れており、こうした優位性が今後の市場拡大につながるはずだ」と話した。

 具体的には、設備機器の保守メンテナンスや、低電磁波の特徴を生かした医療分野での通信手段、一般企業が所有するモバイルPCのリモート管理といった、さまざまなニーズが既存PHSの成長につながるという。

 再建案には、既存PHSとXGPの事業を分割してそれぞれの事業を新会社が継承する案が有力視されている。久保田氏は「それぞれの事業に適したアプリケーションや市場ニーズが存在するため、具体的な事業案は今後スポンサーと協議していく。しかし、既存のPHS技術をベースにしたXGPは運用面などで共通する部分が多いというメリットがある」と述べるにとどまった。

 今後、具体的な再建案をスポンサー候補先各社と詰めるとしているが、久保田氏は執行役員以下の従業員全員の雇用を可能な限り維持するようスポンサー候補各社に要請していく方針。同氏は、「サービスを維持して早期の再建を実現するには、今まで当社で活躍してきてくれた人材が不可欠だ」と述べ、社内に対して「速やかな再建を実現できるよう前向きにがんばってほしいと社員全員に呼び掛けた」という。

 最後に久保田氏は、「スポンサーによる再建策が固まれば、なるべく早く攻勢に転じたい。PHSは若年層にとって定額で安心して使えるコミュニケーション手段となっており、また、XGPとPHSは情報を伝達する社会インフラとしての要請が今後ますます高まるだろう。従来以上に顧客に満足されるサービスを提供していきたい」と締めくくった。

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