遠隔操作で紛失PCのデータ悪用を防止する新技術、富士通が10万台規模で導入へHDD暗号化を併用

富士通はウィルコムと共同で紛失したPCのデータの悪用を防止する新技術を開発。10月以降の商用化と自社導入を計画している。

» 2009年05月07日 16時53分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 富士通と富士通研究所は5月7日、紛失したPCなどに保存されたデータの悪用を遠隔操作で防止できる新技術を開発したと発表した。10月以降の商用サービス化と同社グループで10万台規模の導入を計画している。

 新技術は、紛失PCなどが原因となる情報漏えいを防ぐ目的で開発した。PCに専用のBIOSとウィルコムと共同開発した通信モジュールを組み込み、企業の管理者などがインターネットなどでデータの悪用防止もしくは操作ロックを指示すると、PHS網を経由してコマンドがPCに送信され、処理が行われる。

動作の仕組み

 PCにはAES128ビット強度で自動的にデータを暗号化する機能が搭載され、新技術ではデータの復号鍵を消滅させることで第三者がデータを悪用できないようにした。管理者が指示をしてから処理が完了するまでの時間は数分程度。PCがPHSのサービスエリア内にあり、バッテリ残量があればPCの電源がオフになっていても、強制的に処理が実行される。

 処理が実施されると、結果が管理サーバから管理者へ通知され、処理したPCとHDDのID、実施時間、PCへの最終ログイン日時などが分かる。これにより、PCを紛失した以降の状況を把握しやすくなるという。なお、バッテリ残量が残っていない場合やHDDを抜き取られるなどの場合は利用できない。

五十嵐氏

 富士通では、10月以降に新技術を法人向けPC製品で対応させるなどして事業化を計画。併せて同社グループの業務用PCとして10万台規模を順次導入する。経営執行役パーソナルビジネス本部長の五十嵐一浩氏は、「具体的なサービス内容は今後詰めるが、月額数百円程度で利用できるようにしたい」と話した。

 開発を担当したパーソナルビジネス本部ソリューション開発統括部長の足利靖氏は、新技術の位置付けについて「従来のサービスはWindowsを起動した状態でないと利用できないなどいくつも制約があったが、今回の技術で解決できる部分が広がる。認証機能やアクセス管理など複数の情報漏えい防止策と併用することで効果が高まるはず」と説明した。

 なお、ウィルコムと共同開発した通信モジュールは情報漏えい対策に特化したもので、データ通信などはできない。消費電力は1ミリアンペア程度で、PCの通常利用に与える影響は小さく、バッテリ残量が半分程度でも1週間は連続して動作するという。

 ウィルコム副社長の土橋匡氏は、「新技術がPCメーカー他社にも採用されるよう、通信事業者の立場から提供できるセキュリティサービスを推進したい」と締めくくった。

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