クラウドSCMの可能性垣根を越える情報システム(1/2 ページ)

サプライチェーンマネジメントの新たな活用方法が広がりつつあるという。自社だけでなく、グループ企業全体、場合によっては競合他社とも組んでシステムを構築するケースも出てきそうだ。

» 2010年02月19日 15時25分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 2000年くらいからのいわゆるネットバブルのころに、サプライチェーンマネジメント(SCM)の導入ブームが起き、日本でも多くのメーカーが、在庫水準の引き下げや納期回答の改善を目指してSCMツールを導入した。

 だが、実際には困難な現実にぶち当たり、失敗に終わるプロジェクトが多かった。主な原因は「工場が抵抗してサプライチェーンプランナー(SCP)の指示通りに生産しない」「部品の名称が工場ごとに異なるなど、マスターデータがふぞろいであるためアプリケーションで管理できる状況ではなかった」といったものだった。

SCM部への集中と需給サイクルの週次化

 アビームコンサルティングのプロセス&テクノロジー事業部、SCMセクター長を務める安井正樹氏によると、それでも、2005年にかけて「在庫責任のSCM部への集約化や、需給管理を月次から週次へと短縮してよりリアルタイムに近い在庫情報を扱うといった取り組みを通じて、在庫水準を引き下げてきた」と指摘する。同社が2月18日に発表した調査結果によると、国内の大手食品、日用品メーカー18社の在庫日数の水準は、2001年を1日としたときに2005年は0.98日となり、削減していることが分かる。

 アビームの安井氏。SCMについてアビームが診断するコンサルティングサービスを提供する

 だが、ここ数年はまた状況が変わってきている。2006年は1.02日、2007年は1.04日弱、2008年は1.08日と、年々在庫比率が高まってきた。調査対象の中でも、特に食品は鮮度との戦いであるため、わずかな数値の変化が直接売り上げや利益にかかわる構造になっている。

 18社中、生産計画の立案サイクルを「週次」にしている企業は13社、1社は「日次」を達成しており、いまも月次なのは3社のみだった。生産計画の立案サイクルは、短ければ短いほど、実際の需要に近い情報に基づいた計画が立てられる。1カ月後の需要を当てるのはなかなか難しいことから、月次よりも週次、さらに週次よりも日次の方が正確な数字をはじき出せる。

 計画立案サイクルの短縮化は済ませた、今度はまた新たなSCM施策が必要――というのが、現在企業が直面している現状といえる。ここで、SCMについてのユーザー企業の問題意識を調査結果から引用し、考えてみたい。

SCM部への権限集中型に限界

 1つは権限をSCM部に集中化することのデメリットだ。確かに、SCM部が一貫して需給計画の立案をし、在庫責任も持つことで、生産計画の指揮命令系統に迷いがなくなることは利点になる。だが逆に、SCM部は、営業、工場、物流、資財などの各部門との間に立たされることで、オペレーションの実行に時間がかかるという欠点が生まれる。

 先進企業が実施している新たなモデルでは、SCM部が基準としての需要計画のみを指示し、実際の計画立案は営業、物流など各部門が実施する。さらに、突然大規模受注が入るといった状況の変化には、各部門が自ら対応する。

 これにより、担当部門が対応するため意志決定が速くなり、一方でSCM部は状況の監視役を務めるため、責任の所在の明確化というSCM部の機能も守られる。このように、SCM部への集中型から、オペレーションを各部門に振り分ける分散型へとSCMのトレンドが変わりつつある。

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