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» 2010年02月19日 15時25分 公開

クラウドSCMの可能性垣根を越える情報システム(2/2 ページ)

[怒賀新也,ITmedia]
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営業部門主導のSCMへ

 需給計画のサイクルを週次にしても、SCP(サプライチェーンプランナー)が提示する需要予測の精度が低くくては、在庫削減にはつながらない。

 アビームの調査では、需要予測の制度に満足している企業は15社中2社しかなかった。13社が不満を持っている。例えば、「出荷実績を定番分と特売分に区別して把握できるか」の問いには、14社が「できない」と答えた。特売分は売上高、利益に直結するため、ここがあいまいでは「SCMシステム自体への信頼がなくなる」(安井氏)。特売情報の把握は、需要を正確に予測する上で鍵になっている。

 インタビュー調査では、メーカーが特売情報の予測精度を向上させるために、「特売情報が漏れやすいチェーン店や営業員をブラックリスト化してSCM部が積極的にチェックする」といった取り組みをしていることが分かった。また、特売実績を把握できるように、小売店や卸売業者と交渉するのも一手としている。

 ある企業では、営業部門が在庫水準に責任を持つように人事評価の方法を変えた。商品を販売する営業担当者に販売計画への責任を持たせることで、需要予測の精度向上を実現できたという。確かに、自分が決めた販売数量なら、営業担当者として確約せざるを得ない。

将来型SCMではグループ企業が一体に

 こうした状況の中、企業は今後SCMをどのように活用していくのか。アビームは2つの要因を示している。

 1つは、「自立分散型組織」の確立だ。既に、SCMを高度に活用している食品メーカーなどは、SCM部に権限を集中させるのではなく、さまざまな責任を現場の部門に分散させている。「次の段階は、各自の能力を生かす自律分散型のSCM」(安井氏)だという。特に変化が求められるのは営業部門。営業担当者が販売計画の精度をアイテム別に、販売直前まで高める努力をし、計画通りに売り切るための仕組みの導入が増えるとしている。

 2つ目は、規模の利益を追求するために、グループ企業が一体になってSCMの仕組みを構築する体制の確立だ。これにより、単純にいえば1つの部品を大量ロットで購入できるようになる。配送を共同化すれば、コスト削減も図れる。

 しかし、実際には簡単ではなさそうだ。SCMシステム構築における永遠のテーマともいえるマスターデータ統合の問題は「10年前と対処方法は同じ」(安井氏)だからだ。

 1社だけでもマスターの統合に手間取っていたものを、異なる4、5社が集まって資材や部品データを統合するには手間がかかる。そこに多額の資金や時間をかけては元も子もないのは明らかであるため、グループ企業間でのSCM統一は「夢物語」として却下されるケースが多くなると考えられる。

 既にSCMのアプリケーションを導入していることを考慮すれば、マスターは整理されている可能性が高い。整理されている企業同士の統合ならば、意外とスムーズに実現する可能性はある。逆に、こうした問題を解決すれば、メーカーにとって生産管理コストの低減、顧客への回答納期の短縮など、さまざまなメリットが出てくる。仕組み作りの重要性を認識している企業なら、すばやく着手する理由は十分ある。

 調査を通じてSCMの新たな姿を提案したアビームは、SCMコンサルティングの経験を生かし、SCMの需給管理アプリケーションを開発したことを2月18日に明らかにした。参考ライセンス価格は1000万円、導入費用は3000万〜5000万円としている。

 このシステムについてアビームは「クラウド化を検討」しているという。グループ企業一体型のSCMの実装については、クラウドコンピューティング型との親和性が高いと考えられる。マスター統合の問題はなくならないものの、企業間でのサーバやストレージといったインフラ共有などのハードルは低くなるからだ。グループ企業のみならず、場合によっては競合他社と協力し、クラウド上に1つの大きなSCMシステムを構築するといった構想も見えてくる。

 例えば、住宅都市工学研究所が進める「住宅クラウド」などは1つのヒントになる。クラウドの可能性はSCMにも広がる余地がありそうだ。

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