検索市場での競争はGoogleと競うゼロサムゲームではなく、Microsoftは独自の機能でパイ全体を拡大していくつもりだと、Bing担当ディレクターは語った。
米調査会社comScoreによると、Microsoftの検索エンジンBingは着実に米国での市場シェアを拡大しており、2009年6月の時点で約8%だったシェアが、今年2月には11.5%に増加した。
とはいえ、この数字は当分、BingかGoogleかで人々を迷わせることはなさそうだ。米国の検索市場をリードするGoogleのシェアは65%(海外ではさらに高い)。
MicrosoftでBingを担当するディレクターのステファン・ワイツ氏によると、Bingチームは焦ってはおらず、収益が期待できる重要な個別分野で今後もユーザーを引きつけるつもりだという。キーワード検索の分野でBingがCoke(=Google)に対するPepsiのような立場になれば不満はないとしている。
「人々はキーワードベースの検索に満足している」とワイツ氏は米eWEEKの取材で語った。「人間というのは習慣の動物であり、人々は今日、Googleのキーワード検索で十分だと考えており、ほかの検索エンジンに乗り換える必要性を感じていない」
しかしワイツ氏は次のように指摘する――「これはゼロサムゲームではない。われわれが検索分野で取り組んでいること、人々がWebそのものをどのように利用しているのか、そしてWebがどのように変化しているのかを考えれば、人々がこれらの検索エンジンを使ってできることを拡大できる。パイ全体を拡大、すなわちWeb上で行われる検索の総数を増加させられるのだ」
ワイツ氏は、Googleをはじめとするライバルに対するBingの強みおよび優位点として、イベント駆動型タスク、商品検索、知識型検索といった分野を挙げている。例えば、ユーザーが市内のイベントをBingで検索すると、劇場や催し物に直接接続され、簡単にチケットを購入できるという。
商品検索機能を提供するBing Shoppingでは、ユーザーは商品を検索・購入でき、Bing Cashbackを通じて割り引きを受けられる場合も多い。Bing Travelでは、航空券やホテルの予約といった旅行関連のタスクを容易に処理できる。
こういった電子商取引分野での取り組みは、Googleが現在提供しているサービスとは一線を画するものであり、これはGoogleが電子商取引環境の改善を目指している大きな理由なのかもしれない。
「われわれは根本的に異なるエクスペリエンスを提供しようとしている。それは、検索のあるべき姿を考え直させるものでもある。われわれはこういった分野で一定のシェアを確保したいと考えている。キーワード検索の分野でも競争を続けるつもりだ。しかしわれわれが特に注目しているエキサイティングな領域は、検索の可能性をいかに拡大するかということであり、われわれが可能性を拡大できる分野で人々を引きつけるエクスペリエンスを提供したいと考えている。その段階では異なる土俵で競争することになるだろう」とワイツ氏は話す。
「検索によって可能になるマジックとは、ユーザーの行動に対応した何十ものバーティカル分野を瞬時に構築できるということだ」と同氏は付け加える。
何十ものバーティカル分野を構築するために、Bingはより多くの情報にアクセスする必要がある。すなわち、Bingの規模を拡大する必要があるのだ。しかもBing自身が情報を生み出すのではないため、人々が利用している無数のWebサービスに連係する必要がある。
例えば、Bing Travelは現在、Expedia、Priceline、Orbitzなどの旅行代理店にユーザーを素早く結び付けるようにしている。ワイツ氏によると、MicrosoftはほかのWebサービスプロバイダーに対しても同じ取り組みを進める必要があるという。
このためMicrosoftでは、各種のWebサービスと連係し、拡大しつつある同社の検索環境により多くのユーザーを呼び込もうとしている。
「Googleは世界の情報を整理しており、それは素晴らしいことだ。だがわれわれは情報を整理するだけでなく、知識を構成するものを目指している。知識はWebページ上のリンクやマルチメディアだけで成り立つものではない。それは、対立する意見の組み合わせであったり、受け入れることができないデータを提供するサービスであったりすることもあるが、存在することは確かであり、われわれはそれをリアルタイムで引き出せるようにしたい」
Microsoftのオンラインオーディエンス部門のユスフ・メディ上級副社長によると、Bingチームは3月25日にニューヨーク市で開催の「Search Engine Strategies」ショウにおいて、Bingに関するMicrosoftの方針を説明するという。
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