プライベートクラウドは企業IT刷新の“真打”になるか――楽でセキュアでコスト削減を目指す

食らうど、もといクラウド化するとヘルプデスクも変わる?悲しき女子ヘルプデスク物語(1/3 ページ)

会社のITが「クラウド」になると、わたしたちヘルプデスクの仕事のスタイルも変わるのかな? そんなギモンをぶつけてみるため、クラウドサービスの現役ヘルプデスク担当者に話を聞いてみました!

» 2010年03月26日 08時00分 公開
[鐙貴絵,ITmedia]

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“くらうど”ってなんだ?

 く、くらうど? なに、それ……???

 もしかして、ソフトウェアをインストールしすぎて、スタートボタンをクリックすると画面の3分の2くらいがスタートメニューに覆われてしまうようなパソコンのことを、いうのか?

 「画面、食らうど!」

 もう数年前のことだけれど、「クラウドコンピューティング」なるコトバをはじめて聞いた時は、まじめにそう思った。なぜだかわたしの頭の中では「クラウド」がカタカナに変換されず、漢字に変換されたのだ。わたしってどこまでも“花より団子”だからかしら? それとも長年使っているMS-IMEの影響?(マイクロソフトさん、ごめんなさい)。とはいえ、きっとこんな間違いを起こしたのは、わたしだけじゃないよね?

 このところIT系の記事には「クラウド」の文字が踊ることが多い。いや、本当はもっと昔から踊っていたのだろうが、わたしの業務に直接関係ないうちは、どうしても耳に、そして頭に入ってこなかった。わたしが直接関わっている業務は非クラウド、つまり社内にあるそれぞれのサーバやデスクトップPCにインストールされているソフトウェアのメンテナンスとか、ハードウェアの保守とかなのだから。

 でも最近になって「クラウドコンピューティングなるものについて、いろいろと調べておかないと、いつか仕事で困るかも」なんて思うようになった。日々の業務に追われるわたしの「クラウドコンピューティング」に対する知識なんて、大したことない。でも、“業務に直接関係ないジャンルの知識はあまりない”ってのは、きっとわたしだけじゃない……よね?

 クラウドコンピューティングについて、矢野経済研究所の小林明子さんによると「ITベンダーのデータセンターに設置されたクラウド基盤上で提供されるサービス」だという。しかしわたしにとっては、「インターネットという雲の中に SaaS(Software as a Service:サービスとして提供されるソフトウェア) がいっぱい」という程度の感覚しかない。でも立場上、今さら「クラウドコンピューティングって何?」なんて聞くのもカッコ悪いしなあ……なんて考えていたある日、このクラウドコンピューティングが業務に絡んできたのだ!


 オタクの元上司(おっと、失礼)、Aさんに、デスクの向こうから声をかけられたわたし。この連載ではおなじみの、オタクスイッチが押されて“いない”状態の、仕事モードのAさんだ。仕事モード時は、いつものすちゃらかな(?)状態ではない。

Aさん ……ということで、ウチもクラウドを導入するかどうか、検討することになったんだ。そこで、現在あるクラウドのサービスについて分かりやすくまとめてくれ。

 あっちゃぁ〜。やっぱり、“いつかこんな日が来るんじゃないか”と思っていた通りだわ……。

 こういう依頼の場合、予備知識があるのと、ないのとでは、作業時間がぜんぜん違う。この業界は、ちょっと目を放したスキに、新しい技術がどんどん飛び出してくる。気になる用語や新しく目にした言葉は、すぐ調べておくに限るのだが、つい日々の業務に流されて、調べるのを怠ったがために、いつの間にやらウラシマタロウ状態になることもしょっちゅうだ。今回もまさに、陸の孤島ならぬ雲の合間の孤島に流された気分。でもとにかく、業務として取り掛からねば!

 あれやこれや調べるうちに。多くの企業から多種多様なサービスが出ていること、それらのサービス導入のための初期投資金額から課金体制まで実に幅広いメニューが存在していることを知り、すっかり煮詰まってしまったわたし。いまのわたしは、マンガのように頭の上で花が咲いたり部品が飛び出したりしていそう。これはどうやら、一筋縄ではいかなそう。

 過熱しすぎて熱暴走気味の頭を冷やそうと、コーヒーを入れてデスクでまったりすることにした。眠くならなきゃいいけれど、なんて心配しながら飲むコーヒーは苦い。知らない間にわたしの脳みそは現実逃避を始めたのか、ふと新しいシステムを導入した4年ほど前のことを思い出していた。


イラスト:本橋ゆうこ

 新しいシステムを導入するタイミングでは、ヘルプコールが増える。なんでも「トラブルの7割は変更時に起きる」らしい。それって結構、当たっていると思う。あの時もヘルプコールが一時的に増えた。しかもその内容は多岐にわたる。普段ならありえないようなちょっとしたものから、導入したシステムの技術的なことまで、実に幅広いコールがかかるのだ。だから、内容よりも走り回ったという記憶のほうが強い。わたしたちサポートスタッフが電話で答えられるレベルならいいが、新しいハードウェアが絡んだり、新しいネットワークが絡んだり、なかには技術部門から教えてもらってないような内容のものだったりすると、もうお手上げ……。そういう場合は、コールの内容をエスカレーション(専門的知識を持つ人に転送)するのだが、あの時もエスカレーション数が増えてずいぶんと技術者の手をわずらわせたものだ。内容はこちらにフィードバックされるので、わたしもずいぶん勉強にはなったんだけどね。

 ……ん? ちょっと待って。もし、クラウドコンピューティングの導入が決定したら、どうなるんだろう。今までわたしたちのところにやってきていたヘルプのいくつかは、クラウドを提供する企業に対して行われるはず。とはいえ、利用者の立場からすれば、ヘルプコール先は一箇所に決まっていたほうがいい。だから実際にはわたしたちのところにヘルプコールがきて、それをクラウド提供企業にエスカレーションすることになるんだろう。

 その時の体制って、どうなるのかしら。実際にクラウドが導入されると決まったら、そのあたりの体制もちゃんと決まるんだろうけど、予備知識がないとちょっと不安。でもそのあたりのサポート体制って、まだあんまり話題になっていないようで、調べてみても、参考になりそうな記事は見つからなかった(調べ方が悪いのかもしれないけど)。うーん。一番知りたいことが見つからないのはちょっとショック。でも調べようがないからって、そのままにしておくのはまずい。さて、どうしよう……。

 そうだ! 直接話を聞けばいいじゃん。クラウドな人たち(?)に。

 わたしは、この素晴らしい計画を実行するために、編集部を通じてアポイントメントを取ってもらった。そして今回、それが実現したのだ!

 2月のある日、わたしはドキドキを抱えながら上京し、東京は品川に向かった。今回、時間を割いてくれたのは、「ソニーの法人向けITソリューションサービス“bit-drive”のデジタルゲートヘルプデスク」のスタッフ、トモ(♂)さんとヨーコ(♀)さんだ。

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