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» 2010年04月09日 15時00分 公開

主観的確率の導入で意思決定方法が覆る「ベイズな予測」で未来を拓け(2)(2/2 ページ)

[宮谷隆,ITmedia]
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 トリックはこれだけではない。さらに国の借金は900兆円を超えてくる。これが将来の国民負担率に追加されていくわけだ。日本のGNIは500兆円くらいだから、仮にこれを利率を考慮しないで10年で返済するとすれば、年18%くらいの負担になる。これを国民負担率に足すと、日本はGNIが大きいのにもかかわらず、60%近い国民負担率に達する。

 そうそう、国民負担率の高い国で、イタリアを落としたのを気づかれたであろうか? イタリアは、国民一人当たりのGDPが日本と同じくらいなのだ。だから、イタリアも債務残高に問題のある国になっている。(財務省債務残高国際比較

 ただし、ここにもトリックが隠されている。ここで提示されたグラフは、その名前にもかかわらず、債務残高そのもののグラフではなくてGDPを分母にしたときのグラフなのだ。当然、GDPの大きい日本はグラフのスケールとしては小さく表れるはずである。日本のGDPはイタリアの2倍以上だ。従って、日本の債務残高がいかに巨額なのかをはかり知ることができるだろう。

 頻度主義の統計学者にできるのはここまでだ。債務があるのでどうしようもない、この線形グラフは増加する。正規分布に当てはめれば、デフレが進行し歳入は減少する。従って、消費税導入は必然であるで終わりだ。ベイジアンなら、そこでは終わらない。

 どうしたらノルウェーやデンマーク、ルクセンブルグのように国民一人当たりのGNIを増やして、個人の消費税増額分の相対的負担を減らせるだろうか? と考えることができる。なぜなら、仮説を基にした予測モデルにより、要因を抽出できるからだ。日本はシルバー資本主義だろうが、なんだろうが関係はない。

 GNIの高い国の各種の要因を離散値として抽出し、GNIを増やせる国のモデルを数学的に作ることができるのである。このモデルから、おおむね見えてくる要因は、タックスヘイブン、金融立国、油田だ。タックスヘイブンについては、金融立国、観光立国との狭間において、実は検討すべき戦術ではあるが、問題が多いので別の機会にしよう。

 さて、日本の全預貯金額は定かではないが、聞くところでは950兆から1200兆だといわれている。従って、金融立国になることは可能だ。問題は適切な運用予測モデルが作れるかどうかであり、そのアルゴリズムには定量的な指標だけでなく、ベイズ推定のような定性的なデータを含められる、可能な限りの要因を包含できる柔軟な予測モデルが必要だ。

 油田は、もしかしたら日本の近海にあるのかもしれない。だが、エネルギーを作るのに油田である必要はない。日本は海岸線が長いのだから波動を利用したり、風力を利用したりで、実は太陽光だけでないクリーンなエネルギーを作りだせる地域に位置している。となれば、高温超電導ケーブルを海底ケーブルとして設置することさえできれば、送電ロスを低減した形で海外にエネルギーを輸出する戦略も夢ではない。

 という具合に、ベイズ推定を武器に世界を見直し、その世界に働きかけることができるのである。

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著者プロフィール:宮谷 隆(みやたに たかし)

宮谷 隆

マイクロソフト株式会社 シニア テクニカルアーキテクト。日本シリコングラフィックスにて、データマイニング製品MineSetのエンジニア兼プロダクトマネージャを務め、要因分析や予測販売などのソリューションを提供した。マイクロソフトでは、現在のクラウドコンピューティングの先駆けとなった「Hailstorm」の啓発活動を2001年から展開、.NET FrameworkやSQL Server のデータマイニング機能をはじめ、RFIDなど最新技術の啓発活動を行ってきた。現在は、主にWindows Azureを使ったクラウドコンピューティングの啓発活動を推進している。また、政府向けに経済産業省や総務省の協議会における技術標準策定に関わっている。


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