仮想化システムの使用効率を高めるスイッチング技術、Interopで披露される

富士通研究所やExtreme Networksは、仮想スイッチの代替となる開発中の技術を紹介した。

» 2010年06月10日 18時05分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 富士通研究所や米スイッチベンダーのExtreme Networksは、仮想化されたシステムの使用効率を高める上でボトルネックとなっているスイッチング処理の改善技術をInterop Tokyo 2010で披露した。仮想スイッチの機能を物理スイッチが代行するものとなる。

 データセンターでは、仮想化技術によって複数の物理マシンを1台のマシンに集約し、物理マシンの内部で複数の仮想マシンが動作するようになった。これにより、ハードウェアの数が減り、保守やメンテナンスを含めたコストを削減できる。マシン1台当たりの使用率も高まる。

スイッチ1 仮想化環境でのスイッチング処理イメージ(出典:富士通研究所)

 異なるマシン間で通信を行うにはスイッチング処理が不可欠となるが、仮想化環境では物理マシンの内部にソフトウェアによる「仮想スイッチ」機能を持たせて処理を行っている。ユーザーには1台の物理マシン上でなるべく多くの仮想マシンを動作させて使用効率を高めたいという要望がある。だが仮想マシンが増えるのに合わせて仮想スイッチも増えていくため、物理マシンのリソースが仮想スイッチの処理に割かれてしまい、ユーザーが思うように使用効率を高められないという課題を抱えている。

 仮想化によって物理的に分かれていたサーバとネットワークが1台のマシンに統合されるようになった。富士通研究所によると、従来はサーバ管理者とネットワーク管理者の業務が分担されていたが、仮想化によって業務や責任の切り分けが難しくなったという。またExtreme Networksは、データセンター内に仮想スイッチが氾濫するようになり、データセンター内部の構成が複雑化していると指摘する。

 仮想化の普及によって生じた、マシン1台当たりの使用効率のさらなる向上、データセンターの運用改善という課題を解決する方法の1つとして注目されるのが、仮想スイッチ処理の改良である。現在はIEEE 802.1Qbg委員会で仮想化環境でのスイッチングに関する標準化作業が進められている。富士通研究所とExtreme Networksは、IEEE 802.1Qbgで検討されている仕様に基づいた開発を進める。

 富士通研究所の技術は、仮想スイッチの代わりに「Virtual Ethernet Port Aggregator(VEPA)」という仮想マシンの通信を監視する機能を物理サーバに持たせ、VEPAと物理スイッチが連携する。Extreme Networksでは、物理スイッチに「Direct Attach」という機能を組み込み、物理スイッチが仮想マシンの通信を直接検出できるようにした。これによって仮想スイッチの数が減り、ネットワーク構成が簡素化されるという。

スイッチ2 富士通研究所の技術イメージ

 物理スイッチは従来からの物理マシン間のスイッチング処理に加えて、仮想スイッチの役割も担う。仮想スイッチに割り当てられていた物理マシンのリソースを、ほかの用途に割り当てられる。仮想マシンをさらに増やすことが可能になり、富士通研究所では物理マシン1台で稼働できる仮想マシン数を2倍程度増やせるとしている。

スイッチ3 Extream Networksの技術イメージ

 また物理マシンに障害が発生した場合に、内部の仮想マシンのデータを別の物理マシンに移動させることが容易になる。仮想マシンを移動させる際には、移動元の設定情報を移動先の環境に反映する必要があり、サーバ管理者とネットワーク管理者が連携して実施する。連携がうまくいかなければ、移動先での仮想マシンの動作に支障が出る恐れがある。2社の技術では、仮想マシンの移動を自動的に検出できるようにしており、移動元の設定情報がすぐに移動先に反映される。Extreme Networksは、XMLデータを使ってネットワーク設定の変更内容などスイッチに反映できる手段も提供する。

 新技術について、富士通研究所はIEEE 802.1Qbgでの標準化に反映させたいとしている。また、オープンソースコミュニティーのXen.orgへの提供や富士通のクラウドサービス基盤への導入も検討していく。Extreme Networksは、今年10月以降の製品化を目標にしており、既存製品での対応も検討しているという。

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