世界で勝つ 強い日本企業のつくり方

グローバルサイト設計 着地点の見つけ方世界で勝つ 強い日本企業のつくり方(1/2 ページ)

販売やマーケティング活動の拠点になるのがグローバルサイトの強みだが、日本語サイトと異なり、構築が難しいと考える企業も多い。今回はグローバルサイトの肝となる目的の設定方法を取り上げる。

» 2010年06月24日 08時00分 公開
[大里真理子(アークコミュニケーションズ),ITmedia]

 第1回の記事「日本企業と世界市場の距離を縮めるグローバルサイト」において、グローバルサイトを構築する際に企業が直面する課題として、(1)グローバルサイトという役割のスコープを広げすぎて、Webサイトの狙いや実現性の着地点を見いだせない、(2)日本にいると、対象言語や文化的背景を考慮したコンテンツやデザインのアイデアが浮かびにくい、(3)グローバルサイトを継続的に運用する体制・仕組み作りができていない――という3つを挙げた。そこで今回は、グローバルサイト構築の課題を解決する手立てとして、現実的な着地点を考えてみたい。

最小限の努力で始める

 グローバルサイト制作に着手できていない企業は、まず日本語サイトの縮小版である英語サイトを作ることだ。

 完成した英語サイトを眺めていると改善点が見つかるし、ユーザーからのフィードバックやログ解析の結果も参考になる。また、Webサイトの利点である「少ないコストでマイナーチェンジができる」点を生かすことで、予算や手間を最小限に抑えながら、グローバルサイトを素早く成長させることができる。

グローバルサイトの役割から目標を定める

 グローバルサイト構築の目的は主に、(1)海外市場への営業・マーケティング、(2)コーポレートブランディングの強化、(3)世界規模での社内コミュニケーションの活性化、(4)人材採用、(5)財務効果(IR)――の5点である。グローバルサイトの構築における失敗を少なくするには、この順序でグローバルサイトの存在意義を定義するといい。

 昨今の経済情勢の影響もあり、販売促進をグローバルサイトの目的とする企業が増えている。そのためには、魅力的な商品やサービス情報の提供を心掛けよう。またB2B向けの事業を展開する企業は、具体的な売り上げや引き合いの数までを目標に設定しておきたい。これにより、他社に先駆けて未開拓市場への先手を打つことも可能となる。

 国内企業が海外市場でうまく販売促進を進められない理由の1つは、海外における国内企業の知名度の圧倒的な低さが挙げられる。だが、海外事業を展開する企業の多くは、予算の大半を商品の広告や宣伝に割いてしまっているのが実態だ。知名度が低い状態で予算の大半を既存メディアに割くのは効率が悪い。一方、グローバルサイトは低予算で素早く構築でき、コーポレートブランディングとの相性も良い。

 こうした背景から、既存メディアではカバーしきれなかったコーポレートブランディングの成果をグローバルサイトに求める企業も増加傾向にある。多角的な企業情報を潜在顧客やステークホルダーに紹介できるグローバルサイトを起点に、自社への共感を高め、顧客をファンにしていく。このコーポレートブランディングは、実は海外での販売促進支援そのものである。

 また今後は、危機管理を目的としたグローバルサイトの構築も増えると予想される。世界各国に情報を同時配信できるというグローバルサイトの特性が、危機管理に向いているからだ。ある企業では、Web担当者の不在時に危機管理に対応するため、広報部長がモバイル端末を使い、トップページから情報を配信できる仕組みを作っている。

「どこ」に着目したグローバルサイトの目的の設定

 グローバルサイト構築で大切なのは、「どこ(Where)」の「誰(Who)」に「何(What)」を伝えるかを定義することだ。これはユーザーにどんな行動をしてもらいたいかを定めることでもある。これにより、グローバルサイトの目的を達成するための「実現方法(How)」も固まってくる。

 グローバルサイトの狙いや目的を定めるには、対象ユーザーの地域を指す「どこ」の要素に注目するといい。「誰」を指すステークホルダーは消費者、取引先、株主、地域社会、マスメディア、社員、求職者と幅広く、狙いが絞りにくいからだ。

 グローバルサイトを展開する地域によって、対象とすべき言語や文化が大きく異なる。情報の配信先を中国と米国の2国に定めた場合、当然それぞれのユーザーを区別した対象としたサイト設計が必要になる。

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