世界で勝つ 強い日本企業のつくり方

グローバルサイト設計 着地点の見つけ方世界で勝つ 強い日本企業のつくり方(2/2 ページ)

» 2010年06月24日 08時00分 公開
[大里真理子(アークコミュニケーションズ),ITmedia]
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課題の明確化

 対象とする地域(どこ)が不明確なままグローバルサイトを構築すると、最初に設定した目的を実現できなくなる可能性がある。以下、グローバルサイト構築において問題が生じた実際の事例を紹介しよう。

地域特性に合わせたグローバルサイト

 機械メーカーA社は、既存のグローバルサイトのデザインについて、刷新を検討していた。具体的な改善点として、Flashを多用した動的なコンテンツを取り入れたいという要望があった。だが、ヒアリングの回数を重ねるうちに、対象とする市場を従来の北米からアフリカにシフトする意向があることが分かった。

 そこで、最初の改善要望を再検討することになった。動的なコンテンツはナローバンドが多いアフリカでは受け入れられないと判断し、ファイルサイズの軽いシンプルなデザインをグローバルサイトに取り入れることにした。

グローバルサイトの狙いを絞る

 日本のB研究所は、競合する欧米の他研究所に対抗するため、グローバルサイトの刷新を計画していた。現行サイトは研究技術で他研究所よりも優位性があることを強調する内容であり、欧米からの仕事の依頼や共同研究を増やすことが目的だった。

 そこで、より良いグローバルサイトの構築に当たり、サイトの目的を「アジアの研究者やクライアントに興味を持ってもらうこと」と定めた。第二外国語として英語が使われているアジアを対象にすることで、研究技術の優位性を強調するよりも、アジア言語でコンテンツを展開する方が得策だと判断できた。

地道な調査がヒントを生む

 グローバルサイトの構築や刷新を手掛ける際には、現行サイト分析、ログ解析、同業他社調査、ユーザーへのヒアリングが役に立つ。

 同業他社調査は、日本企業と現地(グローバル)企業の両方を対象にしよう。マクロ/ミクロの観点で自社サイトの強みや弱みを相対的に分析できる。

 対象地域の文化的な特徴がつかみにくい場合は、ユーザーヒアリング(誰)が有効だ。数百人規模のアンケート調査に比べて、数人程度に詳細をヒアリングするフォーカスインタビューは、双方向にコミュニケーションできるので、対象ユーザーの特徴や傾向を把握しやすい。ここから仮説を立て、洞察を導くことで、より狙いが絞られたグローバルサイトを構築できるだろう。

 グローバルサイト構築の着地点をうまく見つけるには、サイトの目的を「どこ」「誰」で絞り、機能やコンテンツをそれぞれの対象に合わせることだ。日本語サイトの構築では対象を細かく分類できている企業でも、グローバルサイトでは言語や地域文化といった多様性を考慮してしまうせいか、対象を大きく分けてしまう傾向にある。成果に結び付きやすい部分から着手する姿勢は、グローバルサイト、日本語サイトを問わず同じである。

 次回はグローバルサイトのコンテンツやデザインの共通化、カスタマイズに対する考え方をお伝えする。

プロフィール 大里真理子(おおさと・まりこ)

大里真理子

アークコミュニケーションズ 代表取締役社長。日本アイ・ビー・エム、ユニデン、アイディーエスにてグローバルビジネスや新規事業立ち上げに従事。5年にわたる米国、ドイツ、中国での実務経験を生かし、VisualとVerbalで「Local+Global」なビジネスコミュニケーションをサポートするアークコミュニケーションズを設立。「目指せグローカルなビジネスコミュニケーション!」をモットーに、Web・クロスメディア制作、翻訳、通訳、人材派遣を営む。アイティメディア「オルタナティブ・ブログ」の「マリコ駆ける!」を執筆中。Twitterのアカウントは「@marikokakeru




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