リモートアクセス時の利便性を高める新たな手段――ワイヤレスジャパン 2010

モバイルPCやスマートフォンの普及に伴い、社外で安全に業務を行うための手段も広まりつつある。ワイヤレスジャパン 2010出展企業の中から、リモートアクセスの利便性を高める新たな製品やサービスに注目した。

» 2010年07月16日 19時30分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 無線技術の展示会「ワイヤレスジャパン2010」が7月14〜16日、東京ビッグサイトで開催された。多数の通信事業者やワイヤレス機器メーカーが出展する中、企業のモバイル活用を支援する製品やサービスの展示も行われた。今回は、社外で業務を行うためのリモートアクセスに関する新たな製品やサービスに注目してみた。

 大塚商会は、従業員が複雑な操作をすることなくリモートデスクトップを利用できるパッケージ「オフィストンネリングキット」を展示した。オフィストンネリングキットは、日立ビジネスソリューションの「DoMobileASPサービス」、セキュリティ機能付きの専用USBメモリ、インテルのvPro(AMT4.0以降)搭載PC、管理用サーバで構成される。今年3月に発売したものだが、既に数十社の利用(予定含む)があるという。

 外部のPCからオフィス内のPCを利用するリモートデスクトップは、社外や自宅で容易に業務ができる手段の1つ。だが、ユーザー自身の手で接続や認証などを設定し、オフィスPCの電源も事前に環境を用意しておく必要があるなど、ITに詳しくない従業員にとっては使いづらい側面もある。オフィストンネリングキットでは、専用USBメモリを従業員個人のPCや持ち出しが許可された外部PCなどに接続するだけで、オフィスPCへの接続と電源のオン/オフの操作ができる。

オフィストンネリングキットのデモ。オフィスPCをvProにすることで、安全なリモートアクセスやきめ細かい電源設定、IT部門による管理の簡素が実現する

 まず専用USBメモリを外部PCに差し込むと、DoMobileASPサービスを経由して管理サーバに接続し、認証を行う。認証が完了すると、管理サーバがオフィス内にある従業員のPCの電源をオンにして起動する。外部PCとオフィス内のPCの接続が完了すれば、従業員がオフィスのPCを操作できるようになる。従業員は専用USBメモリを外部PCに接続して、オフィスのPCにログインするだけである。

 外部PCにはオフィスPCの画面イメージが転送されるだけのため、外部PCにデータが残ることはない。また、オフィスのPCがフリーズしてしまった場合でも、vProの機能を活用して遠隔から再起動ができる。

 会場では実際にWiMAX回線で接続するデモが行われたが、専用USBメモリを差し込んでオフィスPCの画面が外部PCに表示されるまでの時間は5分とかからなかった。機器や管理サーバの設置などの初期費用とASPサービスの利用料としてPC1台当たり月額1500円のコストが伴うが、パッケージであるために導入の負担が小さいことと、接続のために従業員に複雑な操作をしなくとも良い点はメリットとなりそうだ。

 ジュニパーネットワークスは、SSL VPN経由でiPhoneから社内システムを利用するためのアプリケーションのデモ映像をブースで披露した。同社は5月に「Junos Pulse」というクライアント向けアプリケーションを発表しており、ブースで紹介したのはiPhone向けのJunos Pulseとなる。

iPhone向けのJunos Pulseのデモ。Appleの審査待ちのため実機のデモはされなかった

 同社にSSL VPN製品では、iPhoneのSafariブラウザからのアクセスには対応しているものの、Webベースのシステムしか利用できないという。iPhoneユーザーが世界的に増える中で、Webベース以外の業務システムを安全に利用したいというニーズが高まっているといい、Junos Pulseでこれが可能になるとしている。現在はApple側の審査を待っている段階にあり、承認され次第App Store経由で提供される見込みだ。Windows Mobile向けのJunos Pulseもリリース準備が進められているという。

 新製品ではないが、オーシャンブリッジが出品したファイル圧縮ツール「NXPowerLite」に注目する来場者も目立った。NXPowerLiteは英国のソフトウェア企業が開発したもので、オーシャンブリッジが国内総販売代理店となっている。Microsoft OfficeやJPEGのデータのファイルサイズを高圧縮できるのが特徴で、6800社以上の導入実績がある。

 ブースのデモでは、約5MバイトのPowerPointデータをワンクリック操作で瞬時に約1Mバイトに圧縮する様子を披露した。圧縮されたデータの画像はプレゼンテーションに支障がないレベルの劣化具合だ。圧縮の効果はファイルサイズが大きいほど高く、最高で88%の圧縮が可能だという。

NXPowerLiteのデモ。圧縮の設定は「高品質」「標準」「モバイル(スマートフォン向け)」「カスタム(任意指定)」の4つから選べる

 ファイルサイズが軽くなれば、転送時の短縮やモバイル環境においても軽快な作業を実現する。また、ストレージの節約にも効果的だ。例えば同製品を3000ライセンス導入したパナソニック エナジーでは、ファイルサイズの圧縮によって、年間で約1600万円のストレージコストの削減を見込んでいるという。同社ではIT部門が現場部門にファイルサーバの節約を求めてきたが、抜本的にファイル容量を節約する手段として、現場社員のデスクトップ上でデータを圧縮できる同ツールの導入を決めたとしている。

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