ネットのプライバシー保護は第三者任せ、日本とEUのユーザー意識に大きな違い

日本のインターネットユーザーはEUのユーザーよりもプライバシー保護に対する意識が低い――。IPAの調査で明らかになった。

» 2010年08月16日 14時50分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 情報処理推進機構(IPA)は、インターネット上でのプライバシーに対するユーザー意識調査の結果を発表した。欧州連合(EU)での同様の調査と比較した結果、日本のユーザーはプライバシー保護に対する意識がEUのユーザーよりも低いことが明らかになった。

 この調査は、インターネットユーザーの情報を利用したサービスや商品が普及する上で課題となるプライバシー保護の在り方を探る目的で実施されたもの。IPAは、EUの研究機関Institute for Prospective Technology Studiesが15〜25歳を対象に実施した調査を参考に、日本人の15〜25歳(日本人Y)と15歳以上のすべての年齢層(日本人A)に分けてインターネットアンケートを実施した。1000件以上のサンプルから動向を分析している。

 まずプライバシーが侵害されるリスクについて、日本のユーザーの意識はすべての質問項目でEUのユーザーを下回った。侵害リスクの自己防衛策の実施状況では、「重要情報を入力する前に取り引きが保護されているか、Webサイトが安全であるかを確認している」との項目で日本がEUを上回ったものの、それ以外ではEUの方が高い値になった(一部項目を除く)。

リスク認知におけるEUとの比較(出典:IPA)
自己防衛のためのデータ管理策(出典:IPA)

 個人情報保護に対する責任の所在では、「ユーザー自身」との回答で日本がEUを上回った。だが「政府」「情報を処理する事業者」「検察や司法機関」でも日本がEUを上回り、個人責任と考えつつも、第三者任せにしたいという複雑な意識を持つことが分かった。日本よりもEUの回答が多いのは「社会全体」だった。

オンライン上での個人情報保護責任(出典:IPA)

 「eID」(ネットサービスでユーザーの識別に用いられる電子的な識別子)システムの利用について、日本のユーザーは「個人情報保護に関する法律が守られている」「システムが安全であると証明するラベルやロゴ」といった点を重視する傾向にあった。

 これらの結果から日本のユーザーは、プライバシー侵害のリスクに対する理解や認識がEUのユーザーより低く、リスクを自分自身で回避するという意識もEUより低いとIPAでは分析する。インターネットのサービス提供者には、個人情報を含めたユーザー情報の取り扱いに慎重さが求められること、情報を安全に取り扱っていることをラベルやロゴなどでユーザーに示すことが有効だとしている。

企業向け情報を集約した「ITmedia エンタープライズ」も併せてチェック

過去のセキュリティニュース一覧はこちら

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ