IT屋に未来はあるかオルタナティブ・ブロガーの視点

IT技術だけでは商売にならなくなったいま、IT屋はどうやって生き残ればいいのか。米国在住のオルタナティブ・ブロガー岸本善一氏は、スマートグリッドに期待を寄せている。

» 2010年09月14日 16時11分 公開
[岸本善一,ITmedia]

(このコンテンツはオルタナティブ・ブログ「ヨロズIT善問答」からの転載です。エントリーはこちら。)

 ひと昔前はITの技術そのものに注目が集まり、それだけで商売になった。最近はITそのものだけでは食ってゆけなくなりつつある。社会貢献とかそういう話はここでは置いておくとして、企業は商売をして金をもうけて利益を出すために存在する。商売の内容がITそのものならIT至上主義になるのだが、全企業に占めるIT企業の数はたかが知れている。ほとんどの企業は、IT以外のネタで商売をしている。つまり、ITは企業の主目的である商売をサポートするために存在する。

 最近のシリコンバレーを見てみると、確かに新しい技術がないわけではないが、なにやらITは元気がない。米国のIT雑誌では、今後望まれるIT屋という特集が組まれたりしている。それをちらりと見ると、簡単に言えば、専門馬鹿ではだめだということだ。技術が理解できるのは当然として、その企業のビジネスを理解してITがどのような形でそのビジネスをサポートできるのかを知っている必要がある。ITはツールだと割り切れることが必要だ。

 ベンチャー企業であればCTOは当然として、VP EngineerでもDirector of Engineeringでもその企業のビジネスを理解している。場合によっては役職のない技術屋でもビジネスの感覚があったりする。技術屋は技術至上主義に陥りやすく、ビジネスなんかには興味がないという人も多いが、こういう人は絶対に潰れない企業に多いように思う。

 ITがITだけでは通用しない時代がやって来た。ITはどこへ向かっているのだろうか。もしあなたが筆者のようなIT屋であれば、今後どうすれば生き残れるのだろうか。

 先ほど述べた、ビジネスやマーケティングの感覚を磨くことは、重要な鍵になるだろう。さらに、今後伸びそうな分野にシフトしていくことも考えられる。IT市場の流れを見ると、グリーンITは今後発展が期待できる分野だ。この分野、IT機器それ自体のエネルギー効率化と、ITを利用したさまざまなビジネスのエネルギー効率化という2つに大きく分けて考えられそうだ。前者にはデータセンターの効率化も含まれ、仮想化やハードの効率化などがあるが、ある程度の成果が上がり始めており、筆者個人としては、急激な成長はあまりないように思える。後者は適用できる範囲が広く、そのためそれぞれのビジネスを理解していないと適切な適用ができない。

 自分の経歴から、筆者は前者に興味を持って活動をしてきた。この分野は適用範囲が狭いこともあるが、対象が絞られているため焦点を絞りやすい。特にデータセンターのエネルギー効率化についてはかなり詳しくなった。後者の場合、範囲が広すぎて焦点の絞り込みが難しい。それで筆者はこれをパスして、今流行りのスマートグリッドへ焦点を移動中だ。

 そのうちわたしのブログでも書くつもりだが、米国で言われているスマートグリッドと日本で盛んに論じられているスマートグリッドはかなり違う。米国でのスマートグリッドは、電力網と通信(Communication)、ITの合体したものと考えられている。今後エネルギー問題は大きくなる。そこへICTを投入するというのは、理に適っている。しかも、筆者は電気工学(EE)の出身だ。ICTとEEの融合はまさに、「いらっしゃ〜い」というところだ。それに対し日本では、スマートグリッドは各家庭の屋根の上のソーラーパネルと電気自動車というイメージが強く、ICTは関係ないように思われがちだ(そのためそのイメージを払しょくする記事を書いている。発表されれば、ここでも報告する)。

 スマートグリッドでのICTは表舞台には立たない。表舞台の主役はあくまで太陽光発電とか電気自動車だ。ICTはよく言えば「縁の下の力持ち」、悪く言えば「陰の黒幕」だ。これはICTを道具として見るというわたしのブログの最初に述べた方向とも合致している。

 さてIT屋のあなた、今後どうしますか。

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