IBM、Java実装「OpenJDK」でOracleと協力――Apache Harmonyから乗り換え(1/2 ページ)

IBMとOracleが、Sunが開発したJavaのオープンソース実装OpenJDKの開発で協力すると発表した。IBMはApache Harmonyを離れ、Javaコミュニティーの安定を目指して“現実的な選択”を行った。

» 2010年10月13日 16時26分 公開
[Darryl K. Taft,eWEEK]
eWEEK

 米Oracleと米IBMは、開発者が既存のJava資産とOpenJDKのリファレンス実装に基づいてソフトウェアを構築・導入できるようにするために協力する計画を発表した。

 Javaを支援する大手企業である2社は10月11日(現地時間)、記者会見でこの計画を発表した。具体的には、主要なオープンソースのJava環境を開発するためにOpenJDKコミュニティーで協力すると、OracleとIBMは説明した。

 両社はOpenJDKコミュニティーをオープンソースJava SE開発の中心とする計画だ。Java Community Process(JCP)は引き続きJavaの仕様策定の主要機関の役割を担い、両社はJCPの強化に努める。

 この提携は、OpenJDKプロジェクト、Java Platformのオープンソース実装、Java SE、Java言語、JDK、JREに重点を置く。

 OracleでOracle Fusion MiddlewareおよびJavaを担当する上級副社長のハサン・リズビ氏は記者会見で「この提携はIBMとOracleにとって、OpneJDKコミュニティーを通じてJavaを発展させるための重要な一歩だ」と語った。

 OracleとIBMは、最近発表されたOpenJDKの開発ロードマップをサポートしていく。このロードマップでは、オープンソースコミュニティーでのJava SE利用を促進する計画だ。

 「Javaコミュニティーは、Javaプラットフォームの発展に不可欠だ。OracleとIBMの提携は、Java SEのプライマリな開発プラットフォームとしてのOpenJDKの成功に基づいている」(リズビ氏)

 IBMで新興技術部門を担当するロッド・スミス副社長も記者会見に列席し、「IBMとOracleは、JavaコミュニティーでOpenJDKに取り組むほかのメンバーとともに、Javaプラットフォームの改革を促進する」と述べた。「OracleとIBMの協力は、企業顧客へのメッセージでもある。企業は今後もJavaコミュニティーを信頼し、事業拡大を支援するためのオープンで柔軟性のある革新的な新技術を開発できる」

 Javaは汎用的でオープンなソフトウェア開発プラットフォームで、アプリケーションを「1度書いたコードはどこででも稼働する」ように設計されている。同プラットフォームは、ビジネスソフトウェア、Webおよびモバイルアプリケーションで最も広く採用されている。

 IBMとOracleによるOpenJDKでの協業の動きは「Javaの未来に横たわる不確実さをぬぐい去る本当の出発点だ」とスミス氏。「われわれのOpenJDKへの取り組みは、Javaコミュニティー全体に貢献するだろう」

 スミス氏は、IBMとOracleは協調してもJavaベースの製品では競合し続けると言う。「もちろんわれわれは製品で競合するが、オープンソースのJava SEリファレンス実装で協力することにより、先進的なJava技術革新での協調レベルを高めている」

 「この提携は、Java技術の本質的で長期的な支援を意味する」とスミス氏は付け加えた。

 「この発表はJavaの勝利だ。この協調でコミュニティーは1つになるのだから」と語ったのは、Eclipse Foundationのマイク・ミリンコビッチ会長。「OracleとIBMの両社が直接プラットフォームの促進にかかわれば、イノベーションの速度は確実に上がるだろう。Javaのエコシステムで、どの主要メンバーがこの動きに追随するかを見るのは興味深い」

 ミリンコビッチ氏はさらに「この発表はEclipseコミュニティーにとっても朗報だと思う。まず、JavaにとっていいことはEclipseにとってもいいことだ。Javaの採用拡大はEclipseコミュニティーを助ける。また、IBMとOracleは、Eclipseプロジェクトの積極的なコミッターとして最も強力なEclipseの支援者だ。両社によるOpenJDKでの提携強化は、将来的なコミュニティー全体の協調にとっていい前兆といえる」と続けた。

 米IDCでアプリケーション開発ソフト担当プログラムディレクターを務めるアリ・ヒルワ氏はeWEEKに次のように語った。

わたしはこの提携を、Javaをめぐる開発者のマインドシェアに関する動きとみている。この発表で、Javaをさらに積極的に発展させ、JCPに変化をもたらそうとしているのがOracleだけではないことが明らかになった。Java界の2大プレイヤーが将来のために立ち上がったということだ。ロードマップはついに、2つの流れから機能を得る試みの現実的な計画を示しつつある。Javaは、停滞と分裂という2つの脅威にさらされている。より多くのベンダーがこれらの問題を解決するために協力するほど、事態はよりよくなる。2大ベンダーがこれらの脅威にさらされており、両社の事業と数百万人の開発者の生活がこれらにかかっていることから、両社はJavaに幾つかの変化を加え、さらには過度に政治化されて崩壊しているJCPを修復しようとさえしている。

 JavaベースのEclipse Mylynプロジェクトの開発者である米Tasktop Technologiesのミック・カーステンCEOは次のように語った。「今年のJavaOneカンファレンスにがっかりした開発者らの議論は、Javaの分岐への疑問で終わりがちだった。分岐で生じる分裂を懸念する向きにとっては、今回の発表はOpenJDKがJavaに関連するベンダー協調のオープンソースの将来になるという重要なメッセージとなる。IBMは、Eclipse IDEの寄付などにより、Javaの成功を助ける主要な進展に貢献してきた。Oracleの持つリソースとIBMのイノベーションをOpenJDKに集中させれば、Java開発者らは複数ベンダーが参加するJavaエコシステムの繁栄が続くという新たなレベルの確実さを得るだろう。(残る疑問はJCPの健康状態だ)」

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