クラウド時代のストレージデバイスアナリストの視点(1/3 ページ)

今回は、クラウド時代における情報ストレージの考え方を分析し、これから起こり得るストレージデバイス市場の変化を予測する。

» 2010年10月20日 08時00分 公開
[塩原一平(富士キメラ総研),ITmedia]

アナリストの視点」では、アナリストの分析を基に、IT市場の動向やトレンドを数字で読み解きます。


 いまや「クラウド」は、企業IT分野、コンシューマー分野のいずれにおいても先端技術、あるいは、ビジネスチャンスと位置付けられており、その勢いは日に日に強まってきている。企業ITの分野では、サーバ仮想化やネットワークを介したアプリケーション操作の技術、salesforce.comやGoogle、Amazonなどに代表されるパブリッククラウドサービスやデータセンターを活用したプライベートクラウドサービスなどが該当する。

 コンシューマー分野では、動画や音楽ストリーミングサービス、一部のオンラインゲームなど、PC端末側へコンテンツ保存をすることなく、サーバにアクセスすることで利用できるサービスが拡大しつつあり、これらをクラウドサービスと定義する傾向にある。今後は、Googleなどの巨大IT企業が各種クラウドサービスを包括して、総合的なクラウドサービス企業へと転換していくことも十分に考えられる。

 本稿では、クラウド時代における情報ストレージの考え方を分析し、これから起こり得るストレージデバイス市場の変化を予測する。

企業IT分野のクラウド

 クラウド時代におけるストレージデバイスの変化について、大きく以下の2点が挙げられる。

(1)サーバクライアント型情報システムにおいてサーバ側に保存されるデータ容量の比率拡大

(2)各ハードウエアでのSSD(Solid State Drive:フラッシュメモリドライブ)採用拡大

 企業のITシステムは、1970年〜1980年代には大型のホストコンピュータによる中央集約型情報処理(メインフレーム型)が一般的であったが、1990〜2000年代にはクライアント端末(PC)の低価格化が進んだことで、企業内での1人1台導入が進み、サーバクライアント型情報システムによる分散型処理にシフトしてきた経緯がある。

 分散型処理の時代にはサーバ、クライアントそれぞれで演算処理能力(CPU)とデータストレージ(HDDなど)の高機能化が進められ、クライアント側では大量の情報処理が、サーバ側ではそれらを集約するというものが主流だった。時を同じく、企業内の情報システムがアナログからデジタルに急速にシフトしたことで、企業のIT投資は活発化しシステムが乱立する結果となった。

 2000年代後半、サブプライムローン問題やリーマンショックなどによる世界経済の低迷に直面した企業は、乱立した情報システムを効率よく統合、運用する必要性が高まり、仮想化技術やクラウドによるサーバ統合や情報ストレージの効率化が進められている。

 企業ITにおけるクラウドは、クライアント側のストレージをなくす、あるいは、最小化して、基本的にはサーバ側でデータを所有するシステムや、情報処理(演算処理、アプリケーション操作)をクライアント側ではなくサーバ側で行うシステムがコンセプトとなっている。情報処理とストレージ機能を一元化することでシステム全体の効率化を図ることが企業ITシステムにおけるクラウド活用の根幹といえる。端的に言えば、「クライアント側のHDDの空き容量がもったいないので、1つのHDDを複数人で分け合って使いましょう」ということである。

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