クラウド時代のストレージデバイスアナリストの視点(3/3 ページ)

» 2010年10月20日 08時00分 公開
[塩原一平(富士キメラ総研),ITmedia]
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SSDの台頭

 2000年前後からストレージデバイス技術におけるHDDとSSDの競合関係が盛んに議論され、現在に至っている。技術的な観点では、ハードディスクメディアを読み書きする磁気ヘッドもSSDも半導体であり、その微細配線加工で容量密度が決定するため、根本的にはかたや技術進化が止まり、かたや市場に生き残るという可能性は低いと考えられている。

 また、HDDは大容量化を実現するための次世代技術として、ハードディスクメディアに微細な溝や穴を形成するディスクリートトラックメディア(DTM)やビットパターンメディア(BPM)の研究開発が進められており、その加工オーダーはNANDフラッシュメモリの次期配線幅と同等の10〜20nmがターゲットとなっていることからも、両者が抱える技術障壁は似ている点が多いことが分かる。つまり、技術的には10〜20nmという超微細加工をどのように実現するかにかかっており、今後も両者の技術進化は平行線のままである可能性が高い。

 では、HDD対SSDの議論で最も重要なポイントは何か。その答えは1デバイス当たりのボトム価格(製造コスト)の差である。一般的に、HDDは販売ボトム価格が30〜35ドル/台であるのに対し、SSD(1チップパッケージ品)で2〜2.5ドル/個といわれている。同じ販売価格でも技術進化によって実現できる容量は年々増加していくため、将来的にはSSDが容量、コストの面で有利になるだろう。

 実際、MP3プレーヤーは一時期、小型(1インチ)HDDが主力になったが、大容量のニーズが低かったため、2000年代半ば以降はSSDが主流となったし、携帯電話、スマートフォン分野でも同様である。

 ノートPC分野でもSSDの搭載が進むと言われて久しいが、現状では大きな拡大には至っていない。これは従来、サーバクライアント型情報システムにおけるノートPCのHDD容量は大きければ大きいほど良いとされてきたためである。しかし今後は、クラウド型情報システムへの移行が進むことで、ノートPC自体にはある程度のストレージ容量が搭載されていれば良いという方向へシフトする可能性が高い。

<strong>図2</strong> ノートPCの搭載ストレージ比率推移予測(出典:富士キメラ総研「2010 ストレージ関連市場総調査」) 図2 ノートPCの搭載ストレージ比率推移予測(出典:富士キメラ総研「2010 ストレージ関連市場総調査」)

 現在、ノートPCでのSSD搭載は、高速起動、高速ファイルアクセス、低消費電力を訴求したハイエンドモバイルPCなどに限られている。今後、ノートPCなどのコモディティ製品のストレージがHDDからSSDにシフトためのクロスポイントは何か。

 それは容量120ギガバイトのSSDが40ドル/台(OEM価格)を切るタイミングである。OSやオフィスアプリケーションなどの基本的な機能を快適に動かせることができるストレージ容量としての120ギガバイト、そして現状のノートPC向けHDDの平均的な価格である40ドル/台(OEM価格)を下回るタイミングが、ノートPCにおける本格的なSSD搭載拡大のクロスポイントであろう。その時期は2017〜2018年ごろと見ている。

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