FacebookのCIO、ティム・カンポス氏は「ERPやデータベースを完全にクラウド化するのは時期尚早」との見方を示す。ただし「残るは技術的な問題のみ」とし、それが解決されれば「クラウド化は必然」だという。
米FacebookのCIO、ティム・カンポス氏は米salesforce.comの年次カンファレンス「Dreamforce 2010」会場で行われたランチミーティングで、クラウドコンピューティングに対する所見を述べた。なおFacebookは、Force.comなどsalesforce.comが提供するサービスのヘビーユーザーでもある。
「Facebookのように歴史の浅い企業のIT部門にとって“成長をどのようにマネージするか?”が重要になる。そのために社内サービスのクラウド化は重要」とカンポス氏は話す。
急速なスピードで成長する同社において、ビジネス部門からイノベーションに伴うシステムの変革を求められた際に、IT部門が“社内システムはオンプレミスだから迅速な対応はできない”と主張することは許されない。「組織や人材が急拡大している現状、業務システムはForce.comのカスタムアプリとしてホストする選択肢以外、考えられない」
そもそもFacebookは「自社の差別化につながる部分にのみ、投資を集中する」方針。「リクルーティングやアセットマネジメントといったコアコンピタンスではないシステムは(Force.comのような)オープンなクラウドプラットフォームに配置するのがベスト。自社でデータセンターを抱えたくはないから」
なおsalesforce.comのコラボレーションサービス「Chatter」については、「さすがにFacebookの社内では使っていないね」と笑う。ただし競合するとも考えていないようで、「(Facebookのサービスと)連携できる部分があるのではと思う。特にChatterは、情報セキュリティに関して優れた部分がある」
Dreamforce会期中に発表されたDatabase.comについては「プラットフォーム(Force.com)の延長線上で構築・運用できるのがユニーク」と評価。ただしレイテンシなどの観点から、Oracleの代わりになることは当面ない(現在Facebookが運用しているRDBはOracle)」という。
ただし、カンポス氏が言う“当面”とは「向こう3年程度」だという。クラウドデータベースへの移行を阻む要因は「純粋に技術的な問題のみ」だとし、それが解決されれば「クラウド化は必然だ」と見通しを示した。
なおDatabase.comについては、salesforce.comのマーク・ベニオフCEOも競合からの批判を予測しているようで、Dreamforce初日の基調講演では「Skypeも当初、既存マーケットの支配者から批判された。だが日を追うごとにユーザーから支持され、存在感を増し、今では古いマーケットを叩き壊した」と主張している。
「ビジネス部門とは別にCIOが存在し、その配下にIT部門があるという組織はレガシーな組織。企業を差別化するのは、IT部門の技術力ではなく、ビジネスモデルと、それを遂行するビジネスプロセスなのだから」とカンポス氏は話す。
「CIOは、ビジネスプロセスを完全に把握したCOO(Chief Operation Officer)になるべき。単なるIT部門は企業にとって無為の存在だ」
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