Chatterはチームワーク重視の日本型ビジネスに向いているDreamforce 2010 Interview

salesforce.comでChatterを担当するショーン・ホワイトリー氏は「優れた技術を素早く評価する日本企業に、Chatterは受け入れられるだろう。チームワークを重視するビジネススタイルにも向いている」と見解を示す。

» 2010年12月10日 07時17分 公開
[石森将文,ITmedia]

 Chatter Freeの発表に加え、Chatter.comを2011年2月に提供開始すると表明するなど、米salesforce.com主催の「Dreamforce 2010」は同社のコラボレーションサービスについて動きの多いカンファレンスとなった。その狙いについて、同社プロダクトマーケティング担当バイスプレジデントのショーン・ホワイトリー氏に話を聞いた。


salesforce.comでプロダクトマーケティング担当バイスプレジデントを務めるショーン・ホワイトリー氏

――今回発表されたChatter Freeと、2011年2月から提供予定のChatter.comの間には、機能差がないように見えるが。

ホワイトリー Chatter Freeは、1アカウントでもよいので、salesforce.comのサービスを利用しているユーザーに提供するもの。対してChatter.comを利用するには、salesforce.comユーザーである必要はなく、Webから登録するだけでよい。こちらは(必ずしもビジネスでの利用を前提としない)プロシューマー向けと位置付けている。

 確かに両者の機能差はあまりないが、あえて言えばChatter Freeのほうが管理機能に優れる。これは、Chatter Freeがsalesforce.comのユーザーに提供することが前提であり、Administoratorの設定が必要だという背景もある。

――あえてChatterをプロシューマーに無料で提供する狙いは?

ホワイトリー われわれは、ユーザーからのフィードバック数をもとに、技術やサービスの開発優先順位を決めている。Chatterを利用が広がれば、得られるフィードバックの質と量が上がるだろう。

――基調講演でマーク・ベニオフCEOは、競合となるコラボレーションソフトウェアを“こき下ろして”いた。

ホワイトリー LotusやSharePointは古くからある技術をもとに進化してきた。だがわれわれは、クラウドサービスをゼロから開発している。引きずっているものや、しがらみがない。それだけクラウドネイティブだということ。

 競合からのマイグレーションにつながる優位点としては、次の要素を挙げておく。それは「従量課金でエラスティック(拡張/縮小が柔軟)なデリバリーモデル」「初期投資が不要」「アップグレードやパッチマネジメントが不要」「オープンなAPIによる拡張性」「FacebookやTwitterと共通した高い操作性」だ。

――たびたび“Facebookを参考にして”というコメントが出ているが、パテントなどは問題ないのか。

ホワイトリー 大丈夫、“ご近所さん”だからね(笑)。それに「プロフィールを基点として、情報をフィードし、共有する」というのは、ソーシャルサービスの基本的なモデルだ。われわれはそこに、企業で利用するに足るセキュリティモデルを付加価値として追加している。そもそもFacebookやTwitter、Google、そしてAppleなどとは、パートナーというよりも、友人同士のような付き合いをしている。お互いに新しいサービスを見せ合ったり、教え合ったりする仲だ。

――Chatterというサービスの定義を伝える難しさは感じているか。

ホワイトリー 半年前のChatterリリース時、プレスやアナリストに対し“プライベートソーシャルネットワーク”と定義して伝えたら、彼らはChatterを“エンタープライズ向けのFacebook”であると理解した。

 誤算だったのは、企業は“ソーシャル”とか“Facebook”という言葉をネガティブイメージを持って受け入れたということ。仕事中に遊ばせるなんてとんでもない、という印象を持たれてしまった。

 そこで最近では、Chatterを表現する際に“コラボレーション”という言葉を使うようにしており、一定の成果を挙げつつある。加えて、初期にChatterを導入したDellなどのユーザーは、ワークスタイルの変革や、ビジネスのアジリティ向上を果たしており、このような実例を伝えることで、さらにChatterが受け入れられるだろう。

――日本市場ではChatterは受け入れられるだろうか。

ホワイトリー そもそもsalesforce.comは、日本市場で高い実績を挙げている。われわれの日本市場での成功は「星のように光り輝いて」いる(実際、国別の売り上げでは日本は米国に次いで2位である)。その背景として、日本企業は技術的に優れたものを採用するのにためらわない、ということが挙げられるだろう。

 日本企業では、組織の固定化が問題になることが多いと聞くが、Chatterはそういった壁を取り払い、日本企業の競争力強化に寄与できると考えている。また日本のビジネスマンはチームワークを重視するというので、Chatterのようなコラボレーションサービスは特に有効になるだろう。

 われわれは新サービスを検討する際に、次の4つの要素を満たしているか否かで判断している。それは「ソーシャル」「モバイル」「バイラル(伝播性のある)」そして「リアルタイム」だ。salesforce.comのサービスはすべてこれらを備えており、真に“Cloud 2”であると言える。

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