インドの“ニセ薬”問題をICTで解決できるかCeBIT 2011 Report

国際展示会「CeBIT」の初日には、ドイツの首相アンゲラ・メルケル氏が来場するなど、賑やかな幕開けとなった。

» 2011年03月02日 11時16分 公開
[伏見学,ITmedia]
ドイツのアンゲラ・メルケル首相 ドイツのアンゲラ・メルケル首相

 3月1日(現地時間)、ドイツ・ハノーファーで情報通信技術(ICT)に関する見本市「CeBIT 2011」が開幕した。CeBITでは企業の展示ブースで新製品や新サービスが紹介されるほか、ICTやテレコムなど分野ごとのカンファレンスや、企業の個別セッションなど、さまざまなプログラムが実施されている。

 CeBITは、ドイツが国家を挙げて力を入れる国際展示会である。会期中、参加者は市内の公共交通機関が無料になるなど、さまざまなサポートが受けられる。また、会場となるハノーファー・メッセには、毎年多くの政府関係者が訪れる。今年は初日に、ドイツのアンゲラ・メルケル首相が展示ブースを巡回し、出展者や参加者を活気付けていた。

真偽を見極め、ニセ薬の服用を防ぐ

 そうした中、同イベント会場で行われたICTに関するカンファレンス「CeBIT Global Conferences 2011」のオープニング基調講演では、インドを代表するIT企業、Globalsのスハス・ゴピナス会長兼CEO(最高経営責任者)が登壇し、インドの一般大衆におけるICTの重要性を語った。

Globalsのスハス・ゴピナス会長兼CEO Globalsのスハス・ゴピナス会長兼CEO

 ゴピナス氏は、世界で最も若いCEOとして世に知られている。Globalsが創業した2000年当時、スハス氏は弱冠14歳という若さだった。その後、Globalsは世界中に顧客を獲得し、現在では10カ国以上にオフィスを構える企業に急成長した。ゴピナス氏が力を入れているのが、インド庶民の日常にICTを取り込むことで、生活をより便利で豊かなものにしようという取り組みである。

 現在、インドでは偽物の医薬品が市場にあふれているのが重大な問題になっている。全世界に出回る“ニセ薬”のうち、3割以上がインドの医薬市場に集まってきているという。こうしたニセ薬の販売は当然法律で禁止されているものの、依然として流通は止まらず、ニセ薬の服用による健康被害が散見されるなど深刻な事態に陥っている。

 こうした状況に対し、ゴピナス氏は携帯電話のSMS(ショートメッセージサービス)を活用して医薬品の真偽を確認するようなサービスを提案する。インドは世界最大の携帯電話普及国であり、加入者は6億人を超える。SMSもしくはテキストメッセージングが主なコミュニケーション手段であるため、例えば、医薬品の購入者が製品情報を登録すると、SMSを通じてそれが正規の薬かどうかという認証結果が返ってくるようなシステムを構築して、被害を食い止めることが重要だという。

 「ホログラムやRFID、バーコードといった既存システムをうまく併用すれば、ニセ薬対策において大きな効果が生まれるはずだ」(ゴピナス氏)

ユニークIDで子どもの教育を管理

 加えて、ゴピナス氏が提唱するのが、米国の社会保障番号(Social Security number)と同様のユニークIDをインド国民に発行することである。この大きな狙いは、子どもの教育を強化し、キャリアを追跡することだ。落第生のモニタリングがインド政府の重要な課題になっており、ユニークIDで子どもの学校生活を管理することで適宜アドバイスやフォローを行い、課題解消の足掛かりにしていくという。教師は常に携帯電話を持っているため、学生に関する情報はSMSなどでその都度リアルタイムに更新し、専用サーバに送信して管理することも容易だとしている。

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