解決指向のストレージ選び

「安ければいい」――その選び方、間違っていませんか?解決指向のストレージ選び

ストレージをコモディティ製品と見なし、価格を重視する傾向が強まっている。必要とする条件に基づいて製品や機能を十分に検討していく基本姿勢を改めて確認したい。

» 2011年03月04日 10時00分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 ストレージの基本的な役割とは、大切なデータを確実に保管し、ユーザーが必要とするタイミングや目的に応じて取り出せることだろう。その役割をきちんと果たしてくれれば、機能的な差異にあまりこだわる必要はなく、値段が安ければ良いと考えるユーザーもいる。ストレージ選びにおいて、果たしてそのような姿勢のままで良いのだろうか。

 企業のマーケティング支援を手掛ける吉政創成の吉政忠志社長は、企業の導入事例に関わる仕事の中で、近年はストレージの導入企業を訪問する機会が多いという。ユーザーのストレージ選びの傾向について、「製品の機能や性能を徹底的に勉強している企業と価格ばかりを見る企業とに二極化している。最近は後者の企業が増えている多い」と話す。

 メーカーや製品ごとの違いを細部まで検討するような事案では、SLA(Service Level Agreement)が厳しく求められるような場合が多い。例えばクラウドコンピューティング環境を整備するようなものや、事業継続性計画(BCP)、災害復旧(DR)対策といったものだ。

 クラウドコンピューティングでは、パブリックやプライベートといった形態を問わず、安定したサービス品質と高いパフォーマンスの提供が必須条件となる。BCPやDRは非常時に備えるためのものだが、平時の環境を確実かつ迅速に継承できるバックアップ環境の整備において、やはり高い品質や安定性、パフォーマンスが求められる。こうしたシステムで運用するストレージは、メーカーや製品ごとの差異がわずかであっても、システム全体に及ぼす影響は無視できず、担当者は厳しい目を持って選定に臨む。

 一方、後者の場合は前者ほど厳しくはない。最近では製品の高機能化が進むと同時に低価格化も進んだ。従来は数千万円から数億円もするようなハイエンド製品に搭載されていたSSDやiSCSIなどが、現在ではミッドレンジやローエンド製品でも利用できるようになりつつある。

 ボリュームゾーンの製品における高機能化は、ユーザーにとって大きなメリットではあるものの、その弊害として、製品選定に対するこだわりの目を鈍らせてしまうことにつながりかねない。「安心して使える製品なら、後はメーカーやSIerに丸投げというユーザーも少なくない」と吉政氏。価格だけで製品を選ぶ傾向が強まり、実勢価格が標準価格の半値以下というような製品も少なくない。安くてそこそこ使える製品だけを選び、容量が足りなくなれば同様の製品を買い足すというままでは、結果的にシステムが複雑になり、運用コストが肥大化するばかりだ。

 吉政氏によれば、メーカーや製品を積極的に吟味するユーザー企業には、アーキテクトと称するキーマンがおり、その人物が中心になって、部門としてストレージを含めたシステム全体の在り方を決定している。「メーカー側が感心するほどストレージに詳しい人も多い。彼らは直面する課題を自ら解決しようと努力している」という。

 例えば、管理するデータの増加によってERPシステムやデータウェアハウスのパフォーマンスが低下してしまったとしよう。この場合、SSDの導入で解決を図る方法が近道とされる。SSDの種類は、USBメモリにも使用されるフラッシュ型と、PC用メモリにも使用されるRAM型に大きく分かれる。耐障害性や価格面ではフラッシュ型SSDが有利だが、データの書き込み/読み出し(I/O)の速さではRAM型SSDの方が有利とされる。

 I/Oの速さを条件に、フラッシュ型SSDより高価なRAM型SSDを採用したとしても、システム全体の効率を高めて事業に貢献する環境を実現すれば、コストに見合うメリットを享受できる。フラッシュ型SSDでも十分なら、コストも抑えられる。だが価格だけを条件にすれば、必然的にフラッシュ型SSDになり、本来必要とするI/Oのパフォーマンスが得られず、課題も解決できないといった事態に陥る可能性がある。

 上記のケースは極端だが、価格の安さだけを追求した製品選びには多かれ少なかれ、必ず弊害が伴う。ユーザー企業に広まるこうした傾向に吉政氏も警鐘を鳴らす。コストは重要な選択基準ではあるが、製品単価だけに注目するのではなく、性能や機能、サポートの違い、そして、導入効果を含めて総合的な基準でユーザー自身が納得できる製品を選ぶことが重要だろう。

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