現在の日本の課題「電力」を考えてみるオルタナティブ・ブロガーの視点

日本が直面している電力不足を解決するテクノロジーや仕組みへの挑戦は、すでに諸外国で始まっている。オルタナティブ・ブロガー永井孝尚氏がデンマークなどの事例を紹介する。

» 2011年03月25日 14時27分 公開
[永井孝尚,ITmedia]

(このコンテンツはオルタナティブ・ブログ「永井孝尚のMM21」からの転載です。エントリーはこちら。)


 現在日本では、さまざまな経済活動が滞っています。その大きな原因は、言うまでもなく停電。何かイベントをしようとしても、その時点で停電になる可能性があれば、キャンセルせざるを得ません。店も停電になると閉店せざるを得ません。まさに、電気は社会活動のエネルギー源。ですので、ここ数カ月から1年間で必要なことは、まずは電力を復旧し、停電をなくすことかと思います。

 一方で、現在、日本の電力のうち24%が原子力に依存しています。今後原子力発電を推進することが難しくなることを考えると、これから数年〜10年単位で必要なことは、日本を低エネルギー消費社会に変えていくことではないでしょうか?

 最大電力供給量は、ピーク時の電力消費にあわせて設定されています。ですので、蓄電によって電力需要の低い夜間などに電気を溜めておきピーク時にその電力を使用するというのは、一つの解決方法になり得ます。

 ヨーロッパでは、すでにこの要素技術を活用しようとしているプロジェクトがあります。

 例えば電気自動車は、年間95%の時間は駐車しコンセントにつながれています。電気自動車(または、プラグインハイブリッドカー)のバッテリーを蓄電池として利用するのは、一つの方法です。風力発電や太陽光発電などの再生エネルギーは、CO2を発生しないという利点はありますが、電力供給量が天候次第で安定しない、という欠点もあります。

 デンマークでは数年前から、この両者をうまく組合わせる取り組みを行っています。具体的には風力発電から電気自動車の蓄電池に蓄電し、電力量が不足したときに電気自動車の蓄電池から、どれぐらいの電力量を確保できるのかをシミュレーションする方法を開発したり、電気自動車からの電力をスマートグリッドに送るシステムを構築しようとしています。IBMもこれらのプロジェクトに関わっていますので、成果を日本で適用していくことも可能です。

 これらはあくまで一例です。電気自動車やプラグインハイブリッドの普及はこれからですので、数年先を見据えた解決策になってくると思います(電力抑制を求められる現状、プラグインハイブリッドとの組合せの方が有望かもしれません)。

 いずれにしても、グローバルな視点であらためて見てみると、日本が直面している課題を解決するためのテクノロジーや仕組みは、すでにさまざまなものがあります。これを日本に適用することで、さらに発展できる可能性もあります。自前主義にこだわらず、役立つものは積極的に活用していく実用主義的な発想が、これからの日本には必要になってくるのではないでしょうか。

掲載内容は永井孝尚個人の見解であり、必ずしも永井孝尚の勤務先であるIBMの立場、戦略、意見を代表するものではありません。

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