IPOなんてどうでもいい、世界を目指そう――日本のベンチャーを見つめ続けたマイナー氏が語る(1/2 ページ)

「jANNOVATION Week」は日本の起業家をシリコンバレーに連れていき、海外進出のチャンスを与えるプログラム。同プログラムに込めた思いを、VCのサンブリッジ会長として数々の国内ベンチャーを支援してきたアレン・マイナー氏に聞いた。

» 2011年07月19日 08時00分 公開
[本宮学,ITmedia]

 「日本のベンチャー企業が本気で海外進出を目指すならば、IPO(新規株式公開)してからでは遅すぎる」――そう語ったのは、ベンチャーキャピタル(VC)であるサンブリッジのアレン・マイナー会長だ。同氏は日本オラクルの初代代表を務めた後、自らの資金でサンブリッジを設立。これまでに米salesforce.comやマクロミル、ジー・モード、オウケイウェイヴなどに投資してIPOを実現させてきた。

 サンブリッジが7月12日に発表した「jANNOVATION Week」は、日本の起業家をシリコンバレーに連れていき、インキュベーション施設訪問や米国の起業家とのセッションなどを通じて「起業への気づき」を得てもらうプログラム。参加者はプレゼンテーションのトレーニングを受けることもでき、プログラムの最終日にはシリコンバレーの起業家・投資家・メディアに対して自分のビジネスプランをアピールする場が与えられる。

 “面白いアイデア”と“本気で海外を目指す気持ち”さえあれば、誰でも海外進出のチャンスを得られるという。同プログラムに込めた思いを、これまで多くのITベンチャーの成長を支えてきたマイナー氏に聞いた。

日本のメディアを海外で見ている人など、誰もいない

photo サンブリッジのアレン・マイナー会長

 「シリコンバレーでTwitter、Facebookなど新しいグローバルベンチャーが次々と生まれる一方で、日本ではグローバルベンチャーが生まれにくい現状が確かにあります」とマイナー氏は話す。

 しかし同氏によると、日本のベンチャーは初期段階ではシリコンバレーのベンチャーに負けないくらいのアイデア、人材、資金を持っていることも少なくないという。

 なぜ日本から世界で活躍するベンチャーが生まれないのか。勝負の分かれ目は“世界からの注目”を集められるかどうかにある――とマイナー氏は言う。

 「日本のベンチャーがいくら面白いサービスを立ち上げ、それをいくら国内メディアが取り上げたところで、日本のメディアを海外からチェックしている人など誰もいません。グローバルベンチャーになるためにはまず、シリコンバレーで注目を集める必要があります。世界中のメディアや投資家たちは、『シリコンバレーには新しくて面白いアイデアが集まる』という先入観を持っているのです」

IPOを急ぐほど手遅れになる

 IPOは市場からの直接金融という資金調達の手段に過ぎないが、それを1つのゴールに設定し、IPOを目指す日本のベンチャーは少なくない。しかし「本気で海外進出を目指すのであれば、上場なんて後回しにするべき」とマイナー氏は指摘する。

 「確かに上場すれば資金調達はできます。しかし、それは同時に株主からのプレッシャーを背負うことでもあります。増収増益を強く求められるようになり、大きなリスクが伴う海外進出などできなくなってしまうわけです」

 そんなマイナー氏には今でも後悔していることが1つある。かつて同氏がジー・モードのIPOを支援していた際、当時はまだ同社のJavaを用いたモバイルゲームというビジネスモデルが米国で確立していなかった上、同ビジネスを米国で展開させたいという現地の通信会社からの誘いもあった。しかしマイナー氏は同社のIPOを急ぐあまり、米国進出の機会を逃してしまったという。後に、同種のビジネスは米国で流行した。

 「今思えば大きなチャンスだった」とマイナー氏は悔しそうに当時を振り返る。「あのとき『IPOなんてどうでもいいから早くグローバル展開しよう』と言えなかったことを、今でも後悔しています」

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