【第3回】消費者に対し、率先して行動せよカスタマーサービスの未来(2/2 ページ)

» 2011年09月29日 08時00分 公開
[伊藤滋伸, 飯塚純也,ジェネシス・ジャパン]
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空気を読め!

 皆さんは日々どれくらいのスパム(またはそれに類する)メールを受け取りますか。ほとんどがすぐにゴミ箱行きではないでしょうか。また、番号が非通知の電話や知人以外からの電話にどれくらい応答しますか。

 既にマス広告はその効果を失い、消費者はより個人にフィットしたサービスしか受け入れません。提案は登録してあるところからだけしか受けず、その選択権は消費者の手にあるのです。

 さらに、消費者は企業に対し、自分にあったサービスだけを、タイミングよく提案してほしいと思っています。いくら既存顧客に大規模なアウトバウンド・キャンペーンをはったところで、不要なタイミングだったら、仮に潜在的にニーズがある顧客であっても見向きもされません。ならば、顧客にむやみやたらとアクセスして売り込むよりも、「空気(コンテキスト)を読んで、こちらから近づく」べきです。

アウトバウンドの進化 アウトバウンドの進化

 つまり、これまでアウトバウンド・キャンペーンを実施する際は、既に企業にある顧客データベースなどから、年齢、性別、住所、職業、過去の購買履歴など、過去の情報をキーにした情報配信しかできませんでした。それに対して、未来のカスタマーセンターでは、リアルタイムな状況をキーにした情報配信ができるようになるのです。個人であればGPSの位置情報、アクセスしている端末、スケジュールなど、また一般的な情報として、天気、株価、交通機関の運行状況など、さまざまなリアルタイムな情報も組み合わせることができます。

 例えば、ある人が会社の近くにあるレストランを通りかかったとします。その場合、朝と夜ではまったくその人の状況は違います。朝だったら通勤途中、遅刻しそうになりながら、慌てて歩いているかもしれません。しかし夜は夕食をどこで食べようか、レストランを物色しながら歩いているかもしれません。その場合、GPSの位置情報や移動スピード、そして職業や時間帯を考慮に入れることで、夜にレストランの近くを歩いているのは食事を目的にしていると自動的に判断し、割引クーポンを送るなど、空気を読んだ情報配信ができるようになるのです。

 さらに、すべての顧客へのアクセスを100%ヒューマンオペレーターで対応する必要はあるのでしょうか。そうした体制を作ることで顧客満足を得ているという思い込みは、ただの自己満足かもしれません。すべての企業が米Zapposのようになれないのと同じことです。

 効率化が叫ばれて久しいですが、例えば、音声に加えて映像を使った情報提供をするなど、企業はより多くのことを、より少ない労力でカバーしていく必要があります。必要とされるケース、またはそういった顧客のためのヒューマンオペレーターであるべきです。

 例えば、下記のビデオにあるように、スマートフォン、アプリケーション、映像などを組み合わせることで、適切な情報を適切なタイミングで提供できるようになるのです。


 「デジタルネイティブ」と呼ばれモバイルを駆使する若い世代は、まず自己解決を図ります。そのインタフェースはWebであったり、自動音声応答だったりします。希望するサービスを受けられたり、抱えている問題さえ解決すれば、システムによる対応に不満はないはずです。


プロアクティブ・コンタクト プロアクティブ・コンタクト

顧客によりプロアクティブにアクセスするための三カ条

(1)顧客のコンテキストを把握してアクセスせよ

顧客に有効な提案や情報を提供するためには、顧客がいつ、どこで、何を望んでいるかを適切に把握していることが重要。そのためには、さまざまなDBを集約することで、顧客のニーズを多面的に洗い出せるようにしよう

(2)顧客にもっともフィットしたアクセス方法でアクセスせよ

提案を受け入れてもらうには、内容とともに適切なチャネルでオファリングすることも重要。さらに、提案内容や重要度に応じて、メール、自動音声、ビデオ、人などを使い分けることで、提案を受け入れてもらえる余地が生まれる。

(3)顧客には柔軟なフローをもってアクセスせよ

顧客が常に同じものを望むとは限らない。例えば、天気によって提案の内容を変えたり、オンとオフの状態――曜日や時間帯によってオファーの内容を変えたりと、オファリングに幅を持たせてみよう



著者プロフィール

伊藤滋伸

ジェネシス・ジャパン株式会社 ソリューション・エンジニアリング本部 本部長

DB、Webアプリケーションサーバの数々の外資会社を経た後、経験を生かして外資の日本進出におけるテクニカルインキュベータを担当。後にEメール管理システムやIVRベンダにも携わり、 2007年にジェネシス・ジャパンに入社。技術部門の総責任者としてユーザー企業へのソリューション提案をはじめとしたプリセールス活動を管理している。

飯塚純也

同 ソリューション・エンジニアリング本部 部長

SI会社にて数々のコンタクトセンターシステムの構築に携わった後、2004年にジェネシス・ジャパン入社。現在は主にプロダクトマネジメントを担当。米国本社に対する技術的な窓口であるとともに、日本市場での製品リリースならびに品質向上、チャネルパートナーへの技術担当となっている。


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