インクジェットで基板印刷――ケンブリッジ大学の研究者が発表

“夢の素材”として注目されるグラフェンを応用したこの技術が実用化されれば、スマートフォンのタッチスクリーンやウェアラブルコンピュータに応用できそうだ。

» 2011年11月28日 10時47分 公開
[佐藤由紀子,ITmedia]

 夢の素材「グラフェン」を使って極薄のフレキシブル基板にインクジェットで印刷する技術を、英ケンブリッジ大学の研究者が発表した(リンク先はPDF)。

 同大学工学部のアンドレア・フェラーリ教授が率いるチームによると、シリコン製の基板面にインクジェットプリンタで印刷できるグラフェンベースの透明インクを開発したという。この技術が実用化できれば、スマートフォンのタッチスクリーンや電子ペーパー、太陽電池など、多様な分野に応用できるとしている。

 グラフェンは、グラファイト(黒鉛)の1層分のことで、炭素原子の六員環が連なって平面状になった2次元素材。極薄でありながら強度があるため、2004年にロシアの研究者が製造に成功して以来、奇跡の素材として注目を集めている。

 研究チームは、グラファイトの塊からグラフェンを化学的に抽出し、プリンタヘッドを詰まらせる要素をフィルタリングした後、極性溶媒の一種「N-メチルピロリドン(NMP)」に加えることでこのインクを製造した。印刷は、基板面にグラフェンインクを載せ、クローム製のソースとドレーンパッドを加え、さらにPQT-12と呼ばれる半導体材料を載せるという3段階で行う。

 ink グラフェンインクでの印刷ステップ

 現在フレキシブル基板への印刷に使われている金属製ナノ粒子は制御が難しく、印刷にも時間がかかるが、これをグラフェンインクに置き換えることで、より薄く、小さな基板を実現できるという。

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