“ビッグデータ”が経営を変える

ビッグデータ時代にも変わらないマスターデータ管理の大切さ

クラウドがコンピューティングのあり方をがらりと変えていくのは間違いないが、データマネジメントの大切さは変わらない。膨大なデータの山に埋もれてしまう前に、ぜひ第一歩としてマスターデータを整備しておきたいところだ。

» 2012年03月07日 08時00分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 「クラウド」がコンピューティングのあり方をがらりと変えていくだろうことは、ITの業界はもちろんのこと、膨大な既存資産を抱える日本企業の情報システム部門も認め始めている。サービスレベルの維持やデータ資産の安全性に大きな懸念を感じながらも、こうしたITの移り変わりを押しとどめることはできない。オンプレミスからクラウドへの変化はもちろん、情報システム部門はその扱うデータソースが従来のトランザクションからソーシャルネットワークの「インタラクション」へと拡大し、PCを遥かにしのぐ膨大なモバイル端末も相手にしなければならない。

 しかし、技術が移り変わる中、変わらないこともある。データマネジメントの本質だ。

 「データマネジメントで重要なことは、より精度が高く、完全なデータを活用できるようにすることだ」と話すのは、データ統合ソリューションのInformaticaでMDM(マスター・データ・マネジメント)を担当するシニアディレクター、キム・デジュン氏だ。

 MDMは多くの日本企業にとって永遠の課題ともいえる。データがさまざまな部門のさまざまなアプリケーションに分断されているうちは、顧客企業が全体でどの商品をどれくらい購入してくれたのかさえ正確につかむことは難しい。顧客に関する基本的なデータ(顧客マスターデータ)、商品に関する基本的なデータ(商品マスターデータ)が一元的によく整備されていないからだ。経済の先行きが不透明なこの時期、売り上げを増やすには既存顧客に対するクロスセルやアップセルの施策が特に有効になるが、これらのマスターデータが部門ごと、アプリケーションごとでは満足な結果は得られないだろう。

 別記事「ITの大バーゲンが加速するビッグデータ活用の潮流」でも書いたが、ビッグデータへの取り組みは、既存のデータ分析と活用が十分結果を出しているかを問い直してからでも遅くないだろう。

MDMこそ情報システムの中核

 MDMは、アプリケーションごとにマスターデータを管理していた部分を切り出し、個々のアプリケーションが必要としたとき、例えば、受発注のトランザクション処理時に基本的なデータを提供する仕組みだ。従来であれば、アプリケーションに従属していたかもしれないが、データ品質への関心が高まるにつれ、しだいに主客が逆転し、システムの中核の座を占めるようになっている。

 「データは、カスタムやパッケージなどのさまざまなアプリケーションから生成される。レガシーシステムやオープンシステムが混在するオンプレミスもあればクラウドもある。これらから新たにマスターとなるデータを取り込み、維持し、必要とされたときに提供するのがMDMだ」とキム氏は話す。

 多くのMDMソリューションは、この「アクセス」(インポート)、「メインテナンス」、および「デリバー」のサイクルを回していく一連のツールから構成されるが、中でも真ん中に位置するメインテナンスはさまざまな技術が投入され、進化を遂げている分野だ。

 このメインテナンスのフェーズをさらに詳しく見ていくと以下のような7つのステップがある。

  • ディスカバー
  • データモデリング
  • クレンジング
  • レコグナイズ(認識)
  • リゾルブ(解決)
  • リレート(関連付け)
  • ガバーン(データガバナンス)

 データに問題がないかどうか調べ、標準化し、重複を検知し、単一のマスターデータを作成、さらにマスターデータ間の関係性も定義する一連のステップだ。関係性の定義は、「階層構造」の表現と考えればいいだろう。顧客が個人の場合は親子や同一世帯の家族を表現でき、企業の場合はグループ企業であることを表現できるし、担当する営業部門や販売代理店を紐付けておくこともできる。ソーシャルメディアのインタラクションデータを取り込めば、交友関係を表現することもできるだろう。

 また、このようにデータの品質を高めると同時に、いつだれが作成・変更・参照したかを管理するデータガバナンスも重要な機能となる。

 さらにキム氏は、「データモデルがあらかじめ固定されてしまったMDMソリューションもあれば、Informatica MDMのように顧客、製品、パートナー、サプライヤーなど、さまざまなドメインのマスターデータを単一のプラットフォームで管理できるものもある」と同社ソリューションの柔軟性を訴求するのも忘れない。

 ビッグデータの時代にも、顧客や商品などに対する単一のビューを実現し、その品質を高めていくことが企業の競争優位性を左右するのは変わらない。膨大なデータの山に埋もれてしまう前に、ぜひ第一歩としてマスターデータを整備しておきたいところだ。

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