攻めの節電――Ultrabookで挑めるか

企業の社会的責任を果たしつつ電力コストも削減するという“一石二鳥”の節電をどう実現すべきか。台数規模の大きいPCはそもそも省電力だろうか? 事業継続も視野に入れた選択肢で検討したいのが「Ultrabook」だ。

» 2012年04月18日 08時00分 公開
[敦賀松太郎,ITmedia]

節電の夏に「Ultrabook」が効く?

 1インチ(約2.5センチ)以下の厚さの薄型ボディに、Core i シリーズ搭載による快適な動作をコンセプトに掲げている「Ultrabook」。前回はバリバリと仕事をこなすためのモバイルツールとしてUltrabookがふさわしいか、営業マンの視点で検討してみた。しかし経営層や情報システム部にとっては個人レベルの使い勝手に加えて、コストや管理性も気になるところ。今回は、「社内ITの省電力化」を業務のミッションとして与えられた情報システム部のB氏の視点で、節電におけるUltrabookの導入価値を検証していこう。

使ってないのに100ワットも消費!

 例年になく遅桜だった2012年の春、もう2、3カ月もすれば汗だくの時期を迎える。空調をはじめとする消費電力が今年も話題になることが必至だ。昨年以上に節電への取り組みが企業に求められることは間違いない。

 わが社でも経営陣から情報システム部に、「IT部門でも節電を推進すること」という宿題を与えられた。ITの節電と聞いて思い浮かぶのは、省電力設計のハードウェアの導入や、省電力化を支援する運用管理ソフトウェアの活用だ。どちらも検討の余地があるだろう。新年度が始まった4月1日に、さっそくITの省電力化プロジェクトを立ち上がった。

 プロジェクトの中でボクに割り当てられたのは、約1000人の社員が利用するデスクトップの省電力化だ。わが社のデスクトップは、2005〜2006年頃に導入した数世代前のタワー型機種。NetBurstマイクロアーキテクチャのCeleron D+Windows XPという組み合わせだ。そろそろ引退……というか、本来ならばとっくにお払い箱だが、物を大切に使う主義のわが社では「買い替えるのはもったいない」という意見が大勢を占めている。Windows XPをどうしても使い続けたいという抵抗勢力もありそうだ。とにかく苦労しそうな仕事を任されたものだ。

 だが今回ばかりは、トップダウンで始まった電力対策だから、うまくいくかもしれない。最もネックになりそうな導入コストも、「省電力のため」と理由付けをすれば、何とか説得できそうだ。

 デスクトップの省電力化という名目でリプレースを担当することになったボクは、まず現行のタワー型機種がどれだけ電力を消費するか調べてみた。カタログ値によれば、待機(アイドル)時は約70ワット程度、ディスプレイは電源オン時で約30ワット、1台でも合計でおよそ100ワットになる。もちろん業務処理中は、それよりも多く電力を消費する。予想以上に多い消費電力量にボクは驚いた。

BCPとVDI化も視野に

 これまでの省電力対策は、実際には何もしていないのに等しかった。外出時や退勤時にこまめに電源を落としましょうという程度の通知をしたにすぎない。ディスプレイだけ電源を落とす人もいたが、業務アプリケーションよりもはるかにコンピュータの処理能力を使いそうな派手なスクリーンセーバーを設定している人がいた。昨年の夏の節電への取り組みには、ほとんど貢献しなかったに違いない。

 これなら最新機種に変更するだけで、相当な省電力効果が期待できそうだ。でも、それだけでは芸がない。ボクは震災直後のことを思い出した。あの時は確か、社内にはほとんど被害がなかったので通常業務ができたはずだった。ところが、電車が止まっていて出社できない社員が続出した。結果的に業務がストップしてしまった。

 それなら、BCP(事業継続性計画)対策も考えてタワー型は撤廃し、ノートPCに統一しよう。外出が多い営業部門に配布していた古いノートPCもまとめてリプレースできる。営業部門の声も集めてみるか。BCPならVDI(仮想デスクトップ基盤)環境も導入したほうがよいかも。これについてはデータセンター担当の先輩に相談してみる。今すぐにではなくても、せっかくならVDI環境のクライアントとしても利用できるものを導入したい。

要は長時間バッテリ

 ボクは導入候補になる機種選びに取り掛かった。ノートPCを外出時に持ち歩いて利用している営業部門には既にリサーチ済みだ。営業部門は、社内ではタワー型のデスクトップ、外出先ではノートPCを利用するという使い分けを面倒に感じていた。「会社のPCが自宅のPCよりも相当に遅いのはいかがなものか」というお叱りも受けた。

 特にノートPCに対する不満が多い。社員に配布しているノートPCは2キロ以上もある重い機種だ。バッテリは2、3時間しか持たないし、頻繁に充電しないといけない。とにかく不便で仕方ないという。ACアダプタを持ち歩くのもかさばるし、移動中に充電ができるような場所はほとんどない。出張に持っていっても、結局は荷物になっただけというケースもあったとそうだ。とにかく不満だらけなのが分かった。

 データセンターを担当する先輩によると、VDI環境の整備も検討している最中だそうだ。先行してデスクトップ環境をリプレースしても問題はないという。ただし、しっかりとしたセキュリティ対策機能が搭載されたノートPCでなければダメだということだった。

 わが社の新しいデスクトップ環境に必要なのは、省電力性とパフォーマンスに優れ、バッテリが長持ちする、持ち運びに便利な軽さで、しかも十分なセキュリティ機能を搭載したノートPCだ。機種選定の作業は難航するかと思ったが、意外にも候補となる製品群はすぐに見つかった。それが、インテルの「Ultrabook」だった。

 Ultrabookの消費電力は、フル稼働時でも40〜50ワット台。電源をオンにしているだけの今のタワー型デスクトップに比べて半分だ。アイドル時ならせいぜい10ワット程度しか消費しないので、単純計算でも消費電力は今の10分の1になる。

皆の期待に応えるUltrabook

 Ultrabookには最新のCore iプロセッサが搭載されている。インテルが公表している複合理論性能(CTP)値を使って性能差を比較してみると、最も廉価なモバイル向けのCore i3とCeleron Dではパフォーマンスが4〜5倍も高い。これだけの高速処理性能なら、ユーザーから文句が出ることはないだろう。

 バッテリは駆動時間が長い製品だと8〜9時間も持続する。就業時間中に電源のない環境でずっと使い続けられる。これならACアダプタを持ち歩かなくて済む。重量も1.5キロ未満の機種がほとんどだから、ACアダプタを含めても営業部門で使っているノートPCの約半分になる。バッテリ駆動時間が長いUltrabookなら、この夏に臨時の停電や輪番停電が起きても仕事を続けられるはずだろう。

 セキュリティ対策もUltrabookの機種の中には、盗難や紛失時にシステムを一時的に無効にできる機能やIDを保護する機能が搭載されているようだ。IT部門にとって有用な「インテル vPro テクノロジー」を選択できるから申し分ない。

 Ultrabookの導入を柱にして、あとはメーカーと機種の選定だ。スペックと価格を比較して検討してみたい。1台当たり7〜8万円台の予算を考えておけば良さそうだ。

 こうしてわが社はUltrabookの導入を決めた。消費電力が10分の1から半分以下になるので、経営陣も大満足だという。今後は具体的に電気代がどれだけ削減できるか、総務部に調査を依頼する。厳しい電力事情になるかもしれないこの夏も、十分に乗り切ることができるだろう。

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