社名も変え、チャットツール一本に絞ったEC studioの狙い田中克己の「ニッポンのIT企業」(2/2 ページ)

» 2012年06月05日 08時00分 公開
[田中克己(IT産業ウオッチャー),ITmedia]
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米国の市場開拓に乗り出す

 同社は1年以内に、ChatWorkのユーザーを100万にする施策を練る。1つは低価格にしたこと。個人の場合は月額380円だが、法人向けは10人で1980円(1ユーザー当たり198円)、100人で9800円(同98円)と利用者が増えるほど安価に設定した。しかも、40人までは無償で使える。

 2つ目は、海外市場の開拓だ。山本氏は「米国でもコミュニケーションツールのデファクトスタンダードにする」ために、この7月に米国法人に赴任する予定だ。米国人をCOO(最高執行責任者)として採用し、まず2人で米国企業をヒアリングして回り、顧客ニーズをつかむ作業を始める。実は「米国の技術関連展示会に出展したが、投資したいという会社はあったものの、使いたいというユーザーがあまり出てこなかった」。そこで。山本氏は米国企業の働き方を学ぶために、ある企業に2カ月間、インターシップのような形で勤務した。「日本のようにグループコラボレーションは響かない。スマートフォンが通勤時に使えるといっても、自動車通勤の多い企業には効果がない」(山本氏)などが分かった。マネジメントや人材採用などの違いも痛感したという。そうしたことをくみ取りながら販売戦略を作成する。

 3つ目は、口コミによる広がりだ。「使って良かった」という個人ユーザーを増やし、新しいユーザーを紹介してもらう作戦である。その1つに「IT飲み会」がある。ITベンチャー経営者らの情報交換の場であるIT飲み会は、4年前に大阪でスタートし、東京など開催地を拡大させている。2012年度中に全都道府県でIT飲み会を立ち上げる計画だ。サンフランシスコやホーチミン、上海、台北(6月に予定)、韓国(将来)など海外でも開催を進めている。参加者とのコミュニケーション手段としてチャットを活用し、普及させる。40人までに無償したのは、そのためでもある。

一期一会

 1979年3月生まれの山本氏は、新しいワークスタイルを実践する。例えば、インターネットなどITを活用した売り上げアップや社員満足度の向上、社内のペーパーレス化、ゲーム機を使った安価なテレビ会議システムの構築、セキュリティ対策などで、こうした自らの経験を中小企業に伝授しているのだ。

 中でも、社員満足度に注意を払ってきた。あるコンサルティング会社が調査する「社員満足度調査」で、EC studioは数年前、2年連続で第1位になった。企業の理念やビジョン、上司との信頼関係、意欲などの項目を調べたもので、山本氏が「社員第一主義を目指し、私自身が入りたいと思える会社」を目指した成果ともえる。だが、その後、1位の座を失った。成功事例として注目を集めたことで、「会社を見せものにしてしまった」と反省する。そこで、ChatWork一本に絞り、社員のアイデアと蓄積したノウハウをフルに生かすことにしたのだ。

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