来日した米EMCのチャド・サカック氏は「近い将来、ビッグデータもコンシューマライゼーションが進む。データの関係性に着目する企業が競争優位に立つだろう」と指摘する。
EMCジャパンは7月26日、来日した同社シニアバイスプレジデントのチャド・サカック氏によるプレスラウンドテーブルを実施した。
「従来エンタープライズの分野では、アプリケーションごとにサーバやストレージを配置していた。ITの中心はアプリケーションであった」とサカック氏は指摘する。しかしこの状況は「仮想化技術によって変わった」という。ユーザーはサーバやストレージのリソースをプールとして所有しており、アプリケーションはそのプールからリソースを使うという構図、つまりクラウドコンピューティング化である。
クラウドによって、ユーザー環境で生み出される情報の量も莫大なものになった。「データを砂粒に例えると、バケツ1杯で約5Mバイト、砂浜で10Tバイト。現在、人類が日々生み出しているデータはエクサバイト単位だから、世界中のビーチを合計しさらに1000倍した量に換算できる」(サカック氏)
しかし、データの量ではなくその価値に着目することが重要だとサカック氏は説く。このアプローチは、いわゆる「ビッグデータ」だと言えよう。
クラウドにおいては、まず「仮想化する」という分かりやすいアプローチがあった。だがビッグデータでは、何から取り組むべきか迷う向きも少なくない。サカック氏によると、ビッグデータへの取り組みは3つのシンプルな要素に分類できるという。
「サイズが大きくてメーラーでは送信できない添付ファイルを、Dropboxで共有する――こういう行動もビッグデータだ。またYoutubeのような動画配信サービスで巨大なサイズのデータを扱うこと。これもビッグデータだろう」(サカック氏)
「そして3つ目は、大規模なアナリティクスだ」と同氏は話す。「例えば保険業界では、顧客の年齢や性別、職業、そして自家用車の車種などによって保険リスクを算定していた。だがその顧客がTwitterで“いまハイウェイを時速120キロでとばしてる”とつぶやいたとしたら、その瞬間に保険リスクを跳ね上げなけれいけない。こういったリアルタイムのシミュレーションは、ビッグデータ以前のテクノロジーでは不可能だ」(サカック氏)
従来とは異なるタイプのデータベースを活用する企業が、競争優位に立つというのが同氏の見方だ。「例えば地図データにおいて重要なのは地理情報ではない。誰がどこにいて、その人との関係性はどのようなものかということ――つまりデータのリレーションシップが求められる」とサカック氏は話す。「近い将来、ビッグデータもコンシューマライゼーションが進むだろう」
「個人がオンデマンドにアナリティクスを実行するようになれば、その時はデータの“トラスト”やセキュリティが一層重要になる」とサカック氏は読む。「EMC、VMware、RSAのテクノロジーポートフォリオは、未来のITの土台になる。売上の40%をM&AやR&Dに投資しているEMCは、将来にわたりエンタープライズITにおいて中心的な役割を果たすだろう」(サカック氏)
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