都市向けOS開発で世界問題の解決を図るLiving PlanIT新鋭のスイス企業CEOに聞く(2/3 ページ)

» 2012年09月10日 09時30分 公開
[末岡洋子,ITmedia]

スマートシティの基盤となるUOSとは

――UOSでは“スマートシティ”を推進しています。スマートシティとはどのような都市を表し、UOSはそれをどのように支援するのでしょうか。

 建物やインフラで構成される都市環境だけでなく人々の日常の活動をスマートにする、これがスマートシティ構想だ。オフィス、教育、小売りなどさまざまな業界を内包する。人々の周囲で生成されるデータを活用することで、バス車内、バス停から降りてオフィス、オフィスからカフェ……と文脈に合わせて必要なデータを必要な端末で利用できる。3分の1しか残っていないワインを冷蔵庫に入れると、冷蔵庫がワインの買い足しが必要なことを知らせてくれるなどが考えられる。

UOSのアーキテクチャ UOSのアーキテクチャ

 スマートシティの背景には、インターネットの普及や、インターネットに対応した端末、センサーを搭載した機器の普及がある。インターネットは、コンテンツとパブリッシュ(公開)、コミュニケーションとコラボレーションという2つのフェーズを経て、産業化という新しいフェーズに入りつつある。このフェーズでは、インターネットは絶対の信頼を受けるユーティリティとなりミッションクリティカルなタスクで利用されるようになる。

 そしてPCやスマートフォンだけでなく、さまざまなデバイスやセンサーが接続し、世界で何が起こっているのかという情報を膨大かつ瞬時に収集できる。この情報を利用して、例えば、収集した情報を分析して異常事態を認識したエレベーターがを自動停止するなど、周囲の環境が状況に適応できる。端末やセンサーという点では、すべてのシリコンがネットワークに接続するだろう。2050年には4兆台のデバイスがインターネットに接続するとわれわれは予測している。

 ネットワークは堅牢になり、さまざまなデータに対応して、収集した情報を分析し、予見的なことが可能になる。例えば、発電・エネルギー製造なら再生エネルギーを柔軟に配分したり、貯水量の調節を行ったり、都市全体を大きな1つのシステムとみなして、エネルギー、水、廃棄物などをビルなどの狭い単位ではなく都市全体の中で動かすことができる。さらに情報収集による学習により、事後ではなく予見的、能動的な対策が可能になるだろう。

 UOSはモノのインターネット時代に向けた本格的なプラットフォームで、センサー技術の開発や実装を加速する。ビックデータの時代と言われているが、現実の世界ではまだ機能していない。例えば、道路工事中に誤ってインターネットのケーブルを切断してしまった場合、すべてがダメになる。

 プロセスはネットワーク上に分散する必要があり、都市の構築には巨大な都市クラウドが必要だ。各ビルがノードとして機能し、都市の成長とともに分散能力が拡大する。収集した膨大なデータを意味あるものにするには、空間における文脈の理解は不可欠だ。グラスの氷が早く溶けるのは室内に人が増えたためなのか、向かいのビルから反射光が当たっているためなのかなどの原因を、プラットフォームを使って理解できる。このように、UOSはマシン間通信(M2M)のプラットフォームであり、クラウドとも密接な関係を持つ。

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