都市向けOS開発で世界問題の解決を図るLiving PlanIT新鋭のスイス企業CEOに聞く(3/3 ページ)

» 2012年09月10日 09時30分 公開
[末岡洋子,ITmedia]
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全世界で約30件のプロジェクトが進行

――OSというアプローチを取った理由は? UOSの導入事例についても教えてください。

 IT業界はここ20〜30年で大きく進化し、ハードウェアがコモディティ化してコストが下がった。相互運用性もある。これらの進化を活用し、プラットフォームという古典的な大規模ソフトウェアビジネスモデルをとる。パートナー関係を構築し、ハードウェアとソフトウェアを統合し、その上にサービスを載せて市場に提供する。さまざまな業界特化型のソリューションを開発するパートナーエコシステムにより、規模を引き出すことができる。

 日本では日立コンサルティングと提携し、複数のプロジェクトを手掛けている。ハードウェアは米Cisco Systemsと提携し、われわれの技術を組み込んだルーターを提供している。ISVとの協業も積極的に進めている。

 実際の利用シーンとしては、ネットワークに実装されることもあれば、建築物や都市に実装されることもある。ポルトガルのポルト郊外で新しい土地構築を進めており、先にロンドンのグリニッジの事例を発表した。このほかに、大型プロジェクトを約30件抱えている。通信オペレーターやシステムインテグレーターでの利用も進んでいる。独Deutsche Telekomの例では、都市開発というよりM2Mがメインで、火災警報、医療システムなどをM2Mで実現する。創業以来、研究開発と製品化に長い時間をかけた。今後、商用活動を本格化していく。

――データ中心の世界でプライバシーはどうなると考えますか。

 現在、われわれは自分のデータをコントロールできず、プライバシーは継続的に侵害されている。Living PlanITでは、物理IDと仮想IDの切り離しにも取り組んでいる。都市環境で個人が持つIDはアバターのようなもので、名前や個人情報は結び付けられていない。生活や活動の中で、このアバターに情報が付加されていく。物理的なID情報を知らなくても、サービス提供はできる。

 あるショップで割引を受けられるなど、メリットがあると思われるときは個人情報を開示し、別の施設では匿名にするなど、自分でデータをコントロールできる。Living PlanITでは、データの著作権はその人にあると考えており、自分の仮想IDについてどんな情報が収集されたのかをチェックするツールも提供する。

――今後の計画やフォーカスしていることについて教えてください。

 大規模なプロジェクトで利用できるように設計面の強化にフォーカスしている。同時に、プラットフォーム上にソリューションを開発するパートナー開拓も行っていく。

 技術面ではネットワークの簡素化とコモディティ化が課題だ。アプリケーションについては、開発者が物理インフラを理解することなく、必要なデータを収集できる方法が必要だ。監視カメラ向けセキュリティアプリであれば、猫が横切ったことは重要ではなく、不審者の監視が目的だ。そこで、顔を含むデータのみを収集するなどのことが可能になる必要がある。

 より大きな範囲では、物理学を素材、環境、人の動きと協調させて最大限の効率を得たり、自然システムと組み合わせたりも考えている。例えば、ロンドンオリンピックの技術コンサルティングを務めた英Buro Happoldとの協業で、古代から砂漠で利用されている雨水による冷却方法を採用することにした。エネルギーを使わずに建物を冷やすことができるのだ。ルネサンス期に数学者、芸術家、建築家など異分野の人々が集まったように、業界を超えたコラボレーションを通じて人類が直面している課題を考えていきたいと思っている。

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