【最終回】時代は「ポストモバイル」、そして「ノマド」へモバイルワーク温故知新(2/5 ページ)

» 2012年10月23日 08時00分 公開
[池田冬彦,ITmedia]

第2の無線通信インフラ、WiMAXの登場

 HSPAデータ通信の普及とともに、全く新しいモバイル通信、WiMAXもサービスを開始した。WiMAXは元々、携帯電話のデータ通信の発展系であるHSPAとは異なり、規格策定は無線LANと同じ「IEEE(米国電気電子学会)」で規格化された、純粋にデータ通信用のプラットフォームだ。

 WiMAX事業については、「鷹山(YOZAN)」が下り75Mbps、上り19Mbps(当初は上り、下りともに9Mbps)の国内初のモバイルWiMAXサービスの実証実験を行い、総務省から初の免許交付を受けた。2005年12月にサービス開始をアナウンスし、当初は東京の丸の内、池袋、一ツ橋、五反田、下北沢の各地域の法人向けにサービスを開始した。しかし基地局の整備が遅れ、ユーザーを獲得できないなどの理由により、2008年には事業から撤退した。

 WiMAXの事業化に成功したのは、KDDIが100%出資した「UQコミュニケーションズ」である。UQコミュニケーションズは、KDDIが行っていたWiMAXのプロジェクトを事業化するために、2008年に設立された。2009年には試験サービスを経て正式サービスを開始し、現在唯一の国内WiMAX事業者として今も順調にユーザー数を伸ばしている。

 WiMAXの特徴は下り40Mbps、上り10Mbps(現在は15.4Mbps)という、かつてない高速な通信ができることだった。また、料金の安さも戦略的だった。既存のキャリア系通信サービスよりも安い月額4480円の固定料金は実に魅力的だった。ちなみにサービス開始当初の基地局数は500程度だったが、急速にエリアを拡大したことでユーザーの支持を集めたことも大きな特徴だ。

端末は、当初はExpressCard/34タイプの「UD02SS」、PCカードタイプの「UD02NA」、USBタイプの「UD01SS」と「UD01NA」が用意された

 さらに、WiMAXの通信モジュールを搭載するPCの登場もこれまでのキャリア系データ通信サービスではみられなかった、WiMAXならではの展開だ。対応PCを購入すれば、あとはオンラインサインアップを行うだけで、その場でWiMAXが利用できる。この背景には、WiMAXを推進するインテルが積極的にWiMAXモジュールを内蔵した「Centrino 2」 搭載のPCを市場に投入したことが背景にある。

WiMAXのスタートとともにお目見えしたパナソニック製のLet'snote(左)とレノボ製のThinkPad

 実際、WiMAXの通信速度は高速で、環境が良好なら20Mbps近い実効速度が得られる。また、月間の転送量制限がないことも魅力の一つだ。ユーザーの中には、これまで使っていたADSL回線などを解約し、家では固定回線として、外出先ではモバイル回線として利用する人が増えた。携帯電話の普及で固定電話回線を契約しない人が増加したのと同様に、WiMAXは固定インターネット回線からの開放をもたらした。

 ノートPCとWiMAX通信端末さえあれば、自宅やオフィス、屋外の区別なく、どこでも高速なインターネット回線を使って仕事が遂行できる。これこそ「モバイル」という言葉さえ古めかしいものになるような時代の始まりを感じさせた。

 さらに、下り165Mbpsという高速なWiMAX2というサービスも2012年以降に予定されている。詳細については明らかにされていないが、既に屋外での実証実験も進められており、2013年の早期にサービスインすべく準備中だ。

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