【最終回】時代は「ポストモバイル」、そして「ノマド」へモバイルワーク温故知新(1/5 ページ)

HSPAによる高速データ通信の普及で、モバイルワークはもはや特別なものではなくなった。今回は通信インフラの発展がもたらしたポストモバイルとも言える現在の状況と、今後の展望についてみていこう。

» 2012年10月23日 08時00分 公開
[池田冬彦,ITmedia]

HSPAデータ通信の発展とモバイルの広がり

 2007年に登場した低価格のHSPAデータ通信サービス、イー・モバイル(現イー・アクセス)の「EMモバイルブロードバンド」の登場により、日本のモバイル市場は大きく進展した。それまでのデータ通信サービスの相場は月額1万円前後と高かったが、月額5000円前後のランニングコストで高速な通信サービスを利用できるとあって、多くのユーザーが利用するようになり、一気にモバイル人口が増加した。

 この状況を鑑み、NTTドコモはそれまで月額の上限が9765円だったデータ通信サービス「定額データプランHIGH-SPEED」を、2年間の利用を前提に最大で月額5985円に割り引く「定額データスタンダード割」を開始するなど、月額データ通信料金の相場は次第に6000円前後が標準的なものになった。

 モバイルユーザーの増加とともに、HSPA通信の高速化も進んだ。2009年に入るとイー・モバイル、NTTドコモ、ソフトバンクモバイルはHSPAの上限である下り14.4Mbpsのサービスを開始している。また、イー・モバイルでは2008年に上り1.4MbsのHSUPAサービスを開始し、2009年にはこの速度を最大5.8Mbpsでの通信が可能となった。また、NTTドコモでも2009年に同様のHSUPAサービスを開始した。

イー・モバイルの5.8MbpsのHSUPA対応端末「D21LC」「D21HW」「D21NE」

 さらに、HSPAの上限速度である下り14.4Mbpsを上回るHSPA+規格も実用化した。2007年12月に標準化されたHSPAの高速規格であり、いち早くこの規格に対応したのはイー・モバイルだった。イー・モバイルは2009年7月に、日本で初めてのHSPA+サービスを開始し、下りの通信速度を最大21Mbpsに引き上げた(上りについては従来通りHSUPAの5.8Mbps)。

 21Mbpsといえば、当時としては画期的な通信速度であり、ADSLの高速サービスの固定回線なみの速度だ。実際の通信速度は電波状況や利用環境によって変動するが、それでも、実行速度が1Mbps前後だったデータ通信が飛躍的に高まり、もはや、「モバイル通信は固定回線より遅い」という常識が過去のものとなった。また、2010年秋には下り42MbpsのDC-HSPAサービスも開始し、まさに、「どこでもオフィス」を実現するインフラは飛躍的に進歩したのだ。

イー・モバイル初の21Mサービス対応のデータ端末「D31HW」でNHKオンデマンドを再生
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