「ネチケット」を賢く学べ! デジタル時代のエチケット「デチケット」の提言“迷探偵”ハギーのテクノロジー裏話(2/2 ページ)

» 2012年10月26日 08時00分 公開
[萩原栄幸,ITmedia]
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 デチケットについて、今までの内容に付け加えたり、一部表現を変えたりしてその内容を作成してみた。当然ながら、個人・企業・環境・地域・国・業種業態などによって異なってくる。そのため「最大公約数」的なイメージでまとめてみたので、一部には疑問などを感じる方がいるかもしれないが、まずはお読みいただきたい。

「『他人を不快にさせない+自分の身は自分で守る』デジタル上の行動規範」(順不同)

1.ウイルス対策ソフトは必須

 ソフトの有効期間にも注意する。ソフトは「買う」ものではなく、その「利用権を買う」ことである。最新にしないと危険な状態にある。この認識を忘れてはいけない。PCなどを新規購入した際には、まずウイルス対策ソフトをインストールして、最新のパターンファイルに更新してからネットサーフィンをする(6章も考慮してほしい)。

2.論文・提出文書では「コピペ」をしない

 最近では学会に提出の論文にもこの手が散見される。公の学術論文や記事、出版物などであれば、大きな事件になる可能性があり、あなたの信用が失墜する。学内の課題やレポートでも本来なら法に抵触する。「参考」「引用」などの違いを認識し、誤字や脱字が多くても自分自身の手で書く。それはあなたの身を守る。

3.メール、Twitter、Facebookなどは慎重に利用せよ

 メールを含めて、SNSや掲示板などは「デジタル」である。「井戸端会議」とは根底から違うものである、原則としてそこでのやり取りは一生残る。つぶやきや日記はデジタル上では存在しない。ブログと日記の最も大きな違いとは、日記は「他人に見られない事」を前提に書く「あなたの心の叫び、本心」である。「○○日記」というブログや個人サイトは、「他人に見られることを前提に書く、あなたが世間に言いたい、主張したい事」だ。どちらも文章表現だが、この違いははるかに大きい。間違っても公開情報や掲示板に本当の意味の「つぶやき」「日記」を書いてはならない。「『公開』は『後悔』の一里塚」なのだ。

 また、内容が他人に対する攻撃では、例えそれが正論でも表現によっては「不快」にさせる。感情論に走らないための「技」が必要だ。それができないなら、閲覧しても投稿はしないという慎重さが必要である。SNSの匿名性を信じてはいけない。「脆弱性を突かれて情報漏えい」という事件にいつでも巻き込まれる可能性がある。中傷やプライバシー情報を掲載してはいけない。こういう事が面倒なら、紙の日記帳におもいっきり本音をぶつけたらいいだろう。残したいなら自宅の金庫に隠し、消滅させたいならシュレッダーにかける。どうしてもデジタルで残したいなら暗号化、パスワード化は最低限の作業だ。

4.チェーンメールを絶対にしない

 「どうしても」という場合は、以前に記載した通りに誤解のない、チェーン化する危険を避けた文章にすべきである。

5.パスワードの重要性を再認識すべし

 パスワードはある意味、「実印」以上に大切だ。しかも、そのパスワードの設定、運用、管理は全て自己責任となっている。俗に言う、「8文字以上(許されるなら15文字以上:論理的根拠があるが割愛)」「英字・大文字・小文字・数字・特殊文字を混在(特殊文字は肝心、2文字以上を推奨)」「意味のない文字列(辞書内の言葉や誕生日、電話番号、住所、恋人の名前など人名は全てダメ)」「小まめに変更」という基本を徹底する。最も重要なことは、「パスワード入力時はだれかに見られないように周辺に気を配る」である。以前にも記載したが、8文字のパスワードで最初の3文字だけが分かれば、1分24秒で解読されてしまう。

6.危険なサイトに行かない、誘導されない

 PC、モバイル端末などインターネットができる機器の全てに言える重要なことは、「危険なサイトにはいかない」「メールの添付ファイルは不用意に開かない」「メールやサイト上でのリンクをクリックしない」などの基本を改めて厳守するように心がけることだ。特にスマートフォン(Android系)なら、ウイルス対策ソフトが現状では管理者権限で動いていないので十分に注意すること(つまり、Androidのウイルス対策ソフトはPCのウイルス対策ソフトほど捕捉率が高くないということである)。

7.SNSで友人の多さを自慢するな

 それは「友人」ではない。「脇が甘い」ことを他人に教えるようなものである。現実とデジタルではおなじ「友人」という言葉でも意味は全く異なる。現実の世界では自分が認める友人は、普通の大人でもせいぜい10人前後だろう。それ以上に深く付き合う間柄の人はそんなにいない。「親族」「社内」「ご近所」「学生時代」「取引先」とさまざまな集団があるが、その多くは単なる「知り合い」だ。SNSで知り合った人を簡単にFacebookなどで「友人に承認」することは、知らない人に自分のプライバシーを見せることに等しい(一部の有名人などは最小の個人情報だけを掲載し、同報通信として「友人機能」を利用しているという。それは「あり」だが、本来の使い方ではないのでここでの議論には相応しくないと思う)。

 リストに100人、1000人の「友人」がいても、いつもやり取りするだろうか。筆者も最初だけは面白がって「友人」の依頼、承認をしたが、このことに気が付いてからは、本当に情報をやり取りしたい人以外は「友人」依頼をしなくなった。承認はといえば、現実で少なからずお付き合いがあると、「承認しない」ともいかないので承認している。やはり少しずつ使いづらいものになってしまい、今では閲覧のみで写真の投稿、意見を述べることが苦痛になっている(もっと細分化すればいいのだろうがそれほどマメではない)。

 「友人」リストにある全ての人(例えば知人で6000人の友人がいるという人がいたが)に、現実やネット上においてリスクを本当に背負える覚悟があるなら、アップしてくる写真やコメントについて全てきちんと返答できるなら、それも「あり」だろう。決して否定はしないが、筆者は現実リだけで十分に多忙であり、とても無理だと感じる。一日はたった24時間、1年でたった8700時間余りしかない。そんな余裕はとてもないと感じている。ネットでの知り合いだけでプライバシーを公開し続けるのは余りにも危険な感じがする。自分は今後こういうポリシーで運用するという事を決めてから行動してはいかがだろうか。

8.「クレーマー」にならないクレームを心がける

 今や、普通の人が簡単にクレーマーになってしまう。その延長線に児童虐待、モンスターペアレント、いじめ、炎上騒ぎなどがあり、加害者に通じていくものがある。クレームをするなら、冷静に事実と想定や伝聞を切り分け、短時間でできれば名前を名乗って、リスクを考えながら訴えるべきである。

 クレーマーに共通するのは、「他人がどう感じるか、自分の身に置き換えない」「自分さえよければ全て『善』と思う」「録音されていても、デジタル上の掲示板やSNSでも、怒りの感情をそのまま相手に伝える」などだ。特に自分が単純に「ちょっといじってあげた」「うさばらし」としてした行為で、相手は簡単に傷つき、時には自殺に追い込まれてしまう。「凶器」になることを感じてほしい。これには訓練が必要であり、ここをクリアしないと、「デジタル免許」――今のデジタル社会において大人の振る舞いにより、自分の身を守り、他人の心を傷つけない「免許」――は与えられない。これは、現実の世界でもデジタルの世界でも全く同じことなので、身につけていただきたい。


 以上に並べた事柄はあくまで序章に過ぎず、さまざまな追記がなされて初めて「初版」となるだろう。「他人に不快感を与えない」という考え方は、「自分の身を守る」という考え方に通じている。そのためには、情報のアンテナを高く張り、知らない範囲を少しでも無くすように努力する。知っていれば何らかの対応策が取れるが、知らなければ対応策を取りようがない。究極のエチケット、それは究極の「自分の身を守る術」である。

萩原栄幸

日本セキュリティ・マネジメント学会常任理事、一般社団法人「情報セキュリティ相談センター」事務局長、社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会技術顧問、ネット情報セキュリティ研究会相談役、CFE 公認不正検査士。旧通産省の情報処理技術者試験の最難関である「特種」に最年少(当時)で合格した実績も持つ。

情報セキュリティに関する講演や執筆を精力的にこなし、一般企業へも顧問やコンサルタント(システムエンジニアおよび情報セキュリティ一般など多岐に渡る実践的指導で有名)として活躍中。「個人情報はこうして盗まれる」(KK ベストセラーズ)や「デジタル・フォレンジック辞典」(日科技連出版)など著書多数。


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